このブログでは、安全域の厚い銘柄を探す判断材料として、ネットネット株指数を用いています。
たしかに、
- 目ぼしい銘柄のIR情報をチェックする。
- 正味流動資産を計算する。
- 時価総額を計算する。
- ネットネット株指数を算出する。
と、幾つものステップを踏まなければ算出することができません。
計算間違いのリスクもありますし、ネットネット株は全市場銘柄の1%にも及びません。
もっと簡単に、効率的に安全域の高い銘柄を見つける方法はないのでしょうか。
その候補となる指数があります。
それは「ミックス係数」(グレアム指数)です。
割安度を図る指数として、ミックス係数を使用することはできるのでしょうか?
目次
ミックス係数は、ベンジャミン・グレアムが提唱したもので、グレアム指数とも呼ばれます。その特徴は、次の式で簡単に指数を算出できることです。
ミックス係数=PER×PBR
PERとPBRという指標を用いることで、当期純利益と純資産を活用して株価の割安性を評価することが可能になります。
この指標を用いることを提唱たベンジャミン・グレアムは、ミックス係数が22.5倍以下の銘柄に投資することを推奨しています。
保有銘柄のミックス係数を調べてみました。
銘柄 | ミックス係数 |
1771 日本乾溜 | 2.83 |
2221 岩塚製菓 | 4.34 |
3277 サンセイR | 5.28 |
3504 丸八HD | 16.61 |
3537 昭栄薬品 | 5.05 |
3952 中央紙器 | 5.73 |
5993 知多鋼 | 2.17 |
6303 ササクラ | 42.73 |
8145 中部水産 | 7.27 |
9193 東京汽船 | 4.79 |
9885 シャルレ | 53.72 |
ササクラ(6303)とシャルレ(9885)以外は22.5以下となっており、日本乾留(1711)・岩塚製菓(2221)・知多鋼(5993)・東京汽船(9193)の4銘柄は5未満となっています。
ミックス係数の長所は、なんと言っても、財務諸表をチェックする必要がないこと。証券会社のページに載せられている情報だけで十分です。
この簡易性は、コングロマリット企業(異業種の会社まで合併などで吸収し、多種類の事業を営む大企業)の割安度合いを知りたいときに威力を発揮します。
また、投資対象の幅を広げたい場合にも有用です。
たとえば、オリックス(8591)、ソフトバンクグループ(9984)、三菱商事(8058)などは、財務諸表をチェックするのも骨が折れる作業ですし、ネットネット株には該当しません。
しかし、オリックスのミックス係数は4.34、ソフトバンクグループは4.73、三菱商事は4.87と非常に割安であることが簡単に分かり、投資対象に入れることも可能になります。
このように
- 財務諸表をチェックせずに手軽に割安度を測れること。
- バリュー投資の対象銘柄を増やせること。
というメリットがあります。
一方で、この指標には、
現在の低い株価を過剰に評価する
というデメリットがあります。
このデメリットは、計算式を思い出せば、すぐに理解できます。
ミックス係数=PER×PBR=(時価総額÷当期純利益)×(時価総額÷純資産)
当期純利益と純資産、両方から株価の割安性を評価する一方、時価総額が2回評価されています。
これでは低い株価が過剰に評価されるのでは・・・という懸念が生じます。
このように、ミックス係数は財務諸表をチェックすることなく割安具合を知ることができます。
複雑な業態の大型株ではネットネット株の算出そのものが難しい銘柄も少なくないため、ときには,ミックス係数も判断材料として用いて、投資銘柄の幅を持たせてゆくこともできるかもしれません。
とはいえ、一つの目安として用いるには有用な指数ですが、ミックス係数単体で使うにはやや心もとない指数です。
ネットネット株指数ほど資産の中身を検証して緻密に割安度合いを測れるわけではありませんし、理論的にも明快ではありません。
そこで、ミックス係数だけで投資対象を選ぶのは難しいと考えています。やはり面倒でもこつこつとネットネット株指数を計算するしかなさそうです。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。