この数ヶ月の値上がりによって、ネットネット株は減少したとはいえ、世界的に見れば、日本市場はネットネット株を含む割安株の宝庫であると言われています。
なぜ日本市場にはネットネット株が多く残されているのでしょうか?
この記事では、国際的な視点に立って、日本市場にネットネット株やネットネット株候補となる銘柄が多くある2つの理由を考えました。
目次
日本市場の多国籍企業の一部は、IR資料に英語の翻訳を用意しています。
たとえば、トヨタやソフトバンクグループのコーポレートサイトには、英語のIR資料がしっかり用意されています。
ところが、小規模の企業では英語のIR情報がほとんど掲載されていません。
たとえば、割安なネットネット株として知られる岩塚製菓は、企業努力を払って、コーポレートサイトに英語ページを作成しています。しかし、英語のIR情報は用意していません。
確かに、海外の機関投資家は、資金を投じて、銘柄調査を行うことは可能なはずです。
でも、ネットネット株は超小型株ばかりなので、調査労力に見合う資金を投下できないわけです。
一方、海外の個人投資家にとって、翻訳を含む調査コストを考えると、それに見合う利益を期待できません。
この言語的障壁ゆえに、海外の投資家は、日本のネットネット株に参入しにくい状態になっていると思われます。
そのため、海外投資家のうち日本のネットネット株に投資を行っているのは、バリュー投資を専門に行う少数の機関投資家と、システマチックに指標のみに着眼して割安株を保有する少数の個人投資家に限られているものと推察しています。
ネットネット株だけでなく、日本企業全般に当てはまることですが、株主を除くステークホルダー(利害関係者)に焦点を当てた経営体質が非難されることがあります。
経営者は、株式価値を高めることよりも、取引先・顧客・金融機関などの利害関係者を優先する傾向が強いと、過度に慎重な経営判断を取ることになります。
その結果、株式価値を高める施策には消極的になり、現金の保有割合を高めて経営の安定を図ろうという保守的な動きになりがちです。
こうして株価は下がり、現金や他の流動資産がじわじわ溜まって、ネットネット株が誕生することになります。
日本市場にネットネット株が多く残されている理由は、主に、①言語の障壁と②ステークホルダー優先の企業文化にあると考えています。
しかし、この傾向が永続的に続くとは限りません。
翻訳技術が飛躍的に向上し、海外の個人投資家でも容易に日本語のコーポレートサイトやその他の情報をアクセスし的確な投資判断を行える時代も近いでしょう。
また、日本独自のステークホルダー優先の企業文化を改めようという動きも生じています。
「株式持ち合い」の解消が進んでいることはその表れです。
したがって、日本のネットネット株に海外からの資金が容易に流れ、大規模な地殻変動が生じる時も差し迫っているのかもしれません。
いずれにしても、日本のネットネット株は、海外のネットネット投資家が欲しくてもなかなか入手することができません。
今は、そんな割安なネットネット株を購入できる、絶好かつ最後のタイミングなのかもしれません。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。