資産バリュー株として有名な銘柄に石井鐵工所 (6362)という東証1部上場銘柄があります。
この石井鐵工所は、NCAV(流動資産-負債で正味流動資産を算出)式のネットネット株ではありませんが、都内に賃貸用不動産を所有しており、この不動産の時価を含めた正味流動資産は時価総額を大きく上回っています。
この石井鐵工所は、ネットネット株投資家として保有し得る銘柄なのでしょうか?
以下の5つの要素を1つずつ確認してゆきます。
目次
石井鉄工所は、「タンクの石井」として知られる石油、LPGのタンク・プラントメーカーです。
したがって、個人的に投資対象から外している不動産業・金融業銘柄には該当しません。
時価総額が113億円です。
売上高は増加傾向にあり、2022年3月期は1998年以降で最高となる売上高を計上する見込みです。



ただし、自己資本は過去10年間で42%に増加しています。



売上高が拡大している点は評価できます。
石井鉄工所は、通常のNCAV式のネットネット株(流動資産から総負債を差し引いた正味流動資産で計算)ではなく、含み資産株です。
したがって、棚卸資産は計算に含めず、賃貸等不動産の期末時価を加味した正味流動資産で割安性を判断します。
また、安全域を確保する観点から、賃貸不動産を売却する際には、税金や諸費用が掛かるため、賃貸用不動産は35%差し引いて評価することにします。
まず、賃貸不動産を含む高換金性資産の内訳を見ると、賃貸用不動産(時価✕0.65)が78%に達しています。



ちなみに、この賃貸用不動産は、中央区や品川区に所在するマンションです。
負債の内訳を見ると、有利子負債が9%に留まっています。



高換金性資産から総負債を除いた正味流動資産は147.6億円です。



時価総額を正味流動資産で割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.77になり、現時点では、ネットネット株相当の割安性は持っていません。



続いて、高換金性資産の過去10年間の推移を見ると、僅かながらも拡大傾向にあります。



2014年以前、ネットネット株指数1.0水準を回復しており、株価の回帰性を期待できそうです。



3,000円前後の現在の株価は、過去3年間の天井圏の水準と言えます。



過去のネットネット株指数や株価水準に照らすと、特別な割安感はありません。
ROEは大きく変動していますが、好況期には7%を超過しており、まずまずの資本効率性を示しています。資金効率の内容をデュポン分解して探ってみます。



当期純利益率は7%前後であることから、収益性は良好です。



総資産回転率は60%前後であり、効率性が悪い企業です。



財務レバレッジは2倍程度に抑制されています。



こうして見ると、収益性によって資本効率性を高めている構図が明らかになってきます。
フリー・キャッシュフローの変動幅は大きい傾向にあります。



過去10年間、一定の配当が支払われています。なお、2022年の支払配当は増額されています。



配当利回りは2%、配当性向は20%台で推移しています。



買収防衛策は導入されていません。
売上高が増加傾向にあります。
株価や過去のネットネット株指数的には、現在の水準が特別に安いようには思えませんが、資本効率性はまずまずであり、増配など株主還元姿勢が見えている点は好印象です。
株価が下がれば買い増したい銘柄です。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。