過去の株価大暴落から、今回のコロナショックについて学べること。

この数週間の暴落を、1929年の世界大恐慌1987年のブラックマンデー2008年のリーマンショックと比較する報道が散見されます。

実際、これらの大暴落には、今回のコロナショックとの間にどんな類似点・相違点があるのでしょうか?

この記事では、過去の大暴落を振り返り、コロナショックのその後を考えてゆきたいと思います。

過去の大暴落との比較(暴落時~暴落後6か月):

今回の株価下落率は、過去の大暴落と遜色がありません。

上記グラフは直前高値で終わったダウ月足終値を「100」とし、暴落後6か月までの米国ダウの株価推移を示したものです。

コロナショック(黄色線)の4か月目は2020年3月の数値であり、確定していないため、3月12日(木曜日)終値数値となっています。

こうして見ると、リーマンショックを上回るスピードで下落しています。

また、これほどの急激な暴落では、勢いのあるリバウンドを期待できず、半年間程度は横ばいの状態が続くことになります。

したがって、今回のコロナショックでは、今後6か月程度(2020年9月頃まで)さらに10-15%程度下落する可能性があるものの、基本的には横ばいの流れが続くことになりそうです。

過去の大暴落との比較(暴落後6か月~3年):

暴落後6か月以降の株価推移は、1929年と、1987年・2008年とでは大きく明暗が分かれました。

上記グラフは、暴落時を含む約3年間の株価推移(月足終値)を示したものです。

ブラックマンデーとリーマンショックでは、それぞれ25か月後と29か月後に暴落直前の高値を超えるまでに回復しました。

ところが、1929年の株価大暴落では、3年後に暴落直前の高値の10分の1程度にまで下落続けてゆきました。

世界大恐慌とブラックマンデーの明暗を分けたものとは?:

2008年の暴落については、2007年以降すでに株価は下落が続いているため、下落余地が少なかったから、という説明が成り立つかもしれません。

しかし、それぞれ高値圏にあった1929年と1987年の暴落でここまでの開きが生じたのはなぜなのでしょうか?

この点について、ジェレミー・シーゲルが『株式投資』第16章で分かりやすく説明しています。

出典:ジェレミー・シーゲル『株式投資』

(1929年と1987年の暴落では)何が違っていたのだろうか。不気味なほど似ていた2つの出来事の結末が、なぜこれほどまでに大きく違ってしまったのだろうか。答えは簡単である。1987年の時点では、中央銀行が経済における流動性の源であるマネーサプライをコントロールする力を持っており、1929年とは違って、それを使うことを躊躇しなかったのである。1930年代初頭の間違いの苦い教訓を心に留めて、FRBは一時的に潤沢なマネーを経済に供給し、金融システム全体が適切に機能することを確実にするために、すべての銀行預金を保護すると公約した。

国民は安心した。銀行の取り付け、マネーサプライの縮小、商品および資産価値のデフレは起こらなかった。実際、市場の崩壊にもかかわらず経済は成長した。1987年10月の株式市場の暴落は、1929年とはまったく異なり、急落がパニックをもたらすものではなく利益の機会になりうるという重要な教訓を投資家に与えた。

出典:ジェレミー・シーゲル『株式投資』290-291ページ

シーゲルは、端的に、中央銀行がマネーサプライをコントロールする力を持ち、躊躇なく行使したか否かが、1929年と1987年の暴落のその後を決定づけたと指摘しています。

この点では、2008年の大暴落の際も、1987年と同様の対応を中央銀行が取ったため、株価が回復したと言えそうです。

過去の大暴落から得られる教訓:

  • 短期(数週間~数ヶ月間)での株価回復は期待できない。

今回のコロナショックでは、すでにこれほどの暴落が生じてしまったのですから、2~3年間は株価が過去の最高値を更新することは見込めないと思います。

1987年の大暴落では25か月、2008年の大暴落では29か月間の時間を要しているためです。

  • 政府・中央銀行の迅速な対応が講じられれば、数年以内の株価回復を期待できる。

今回も、1987年や2008年のように、政府・中央銀行が、経済に流動性を提供し、金融市場を正常に機能させるための防衛策を迅速に講じるならば、1929年型の経済の崩壊は防ぐことができるでしょう。

しかし、今後、各国の財政問題が顕在化し、必要な防衛策を続けることができない事態が生じれば、1929年型の経済の崩壊を予期しなければならないのかもしれません。

今後の対応:

過去の大暴落では、暴落後半年程度は横ばい傾向が続くことを示しています。

そこで、この数ヶ月の間に、レバレッジを解消し、グレアムが推奨する安全域の厚いネットネット株だけを保有する予定です。

1987年や2008年型の暴落後の順調な株価回復が見られれば、来年以降の本格的な株価回復を期待できます。

しかし、万が一、政府・中央銀行の債務問題とリンクし、必要な金融政策・経済対策が取られない場合は、1929年型の暴落の足跡をたどる可能性も考えておく必要があると思います。

その時は、ベンジャミン・グレアムの述べる「積極的投資家」を続けることは断念し、「防衛的投資家」として生きながら、本業を頑張るしかありません。

希望のないことばかり書いたので、最後の明るいグラフを・・・。

下のグラフは、お馴染みの、各資産の名目トータルリターンの推移を示したものです。

出典:ジェレミー・シーゲル『株式投資』5ページ

このグラフを見ると、1929年の暴落はほんの小さなノイズに過ぎません。

1987年の暴落についてはほとんど分かりません。

きっと今回の暴落も、数十年後には小さな変動に過ぎないものになっているのではないでしょうか。

この期間を耐えるために、ジェレミー・シーゲルの『株式投資』の1章と2章、そして16章だけでもお読みになることをお勧めします。

きっと株式投資を続ける力が湧いてくると思います。

今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。

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