アサックス(8772)の銘柄紹介 ― 不動産担保ローンを扱う金融系ネットネット株

ネットネット株の中にアサックス (8772)という東証1部銘柄があります。

このアサックスは、7/27(火)大引け後に第1四半期決算を発表しました。昨年同期比で、売上高は▼12.8%の減収、営業利益は▼17.3%の減益でした。

このアサックスは未保有ですが、ネットネット株投資家としてこれから購入し保有できる銘柄なのか、調べてみたいと思います。

以下の5つの要素を1つずつ確認してゆきます。

①業種

アサックスは、首都圏を中心に展開する不動産担保ローン専業大手企業です。独自ノウハウで低貸倒率を維持していることで知られています。

したがって、本来であれば投資対象から外すことにしている金融業銘柄に該当します。これはおもに、流動資産の内容を精査しきれないためですが、この点を補って余りある購入理由があるか、この後確認してゆきます。

この記事では、アサックスの同業他社として、不動産関連のフィナンスサービスを扱うクレディセゾン(8253)と、信用保証業務を扱うJトラスト(8508)と比較してゆきます。

②企業規模

時価総額は231億円で、材料に対して値動きが軽い銘柄ではありません。

売上高は2008年以降、全く伸びていません

アジア諸国で銀行の買収や再生を繰り返してきたJトラストは別にして、アサックスはクレディセゾンよりも売上高を伸ばしています。

営業利益が拡大傾向にある点は評価できます。

同業2社と比較しても、アサックスの営業利益率は目立って良好です。

自己資本は一貫して伸び続けており、過去10年間で自己資本は、1.99倍に成長しています。

売上高は伸びていないものの、営業利益の伸びは、本業でしっかりとした儲けが出ていることを示しています。

③割安性

当企業の流動資産の内訳を見ると、金融系企業であるため、営業貸付金などのその他流動資産が96%を占めています。

負債の内訳を見ると、有利子負債が95%を占めています。

流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は388億円です。

時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.60になり、現時点ではネットネット株に該当しています。

ちなみに、同業2社のネットネット株指数を調べると、クレディセゾンは9.71、Jトラストは1.31となっており、アサックスの割安度は突出しています。

続いて、アサックスのNCAVの過去10年間の推移を見ると、しっかりと上昇傾向にあります。

とはいえ、2016年以降、常にネットネット株圏に沈んでおり、バリュートラップに陥っている可能性を感じさせます。

現在のところ700円前後で推移しており、過去3年間の底値圏とは言えません

出典:SBI証券

このようにバリュートラップに陥っている可能性があること、株価的に「買い時」とは言えない水準であることが気になります。

④資本効率性

ROEは低下傾向にあるものの、依然として6%台を維持しており、資本効率性はまずまずの企業です。その要因を探るため、資金効率の内容をデュポン分解してみます。

当期純利益率を見ると、損失を計上していないばかりか、45%程度の高収益を達成しています。

一方、金融関連企業であるため、総資産回転率は0.1回を割り込む水準です。

財務レバレッジは2倍程度に抑制されています。

総資産回転率や財務レバレッジが低下しているためROEは低下傾向にありますが、45%に達する純利益率は、アサックスが経済的な堀を有していることを示しています。

⑤株主還元

フリーキャッシュフローがプラスを維持しておらず、安定的な株主還元策を講じることが難しそうです。

また、営業CFがマイナスの年もあり、毎年確実に本業での儲けが出ているわけでもないことを示唆しています。

借入が多い企業であるため、財務CFがプラスの年も見られています。

しかし、配当実績を見ると、安定して配当が支払われています。

配当利回りは2.57%であり、20%程度の配当性向を維持しており、継続的な増配の可能性は乏しいように思われます。

買収防衛策は導入されていません。しかし、500株以上の株式を保有する株主に対して5,000円の優待を実施しており、実質的な買収防衛策の実施しているように感じます。

株主構成を見ると、光通信が5.01%、BBHフィデリティ・ロープライスドストックファンドが1.19%の株式を保有しています。

まとめ

売上高は伸びていませんが、営業利益・自己資本は順調に伸びています。

ただし、株価的にも特別な割安感はなく、万年ネットネット株でもあるため、バリュートラップに陥っている可能性を感じさせます。

高水準の純利益率によってROEもまずまずの水準を保っているものの、キャッシュフローは不安定であり、カタリストを期待させる要素は見い出されませんでした。

利益水準が高い魅力的な銘柄ではありますが、金融関連銘柄でもあることから、原則どおり、投資対象からは外すことになりそうです。

今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。

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