ネットネット株の中に丸文 (7537)という東証1部上場銘柄があります。
この丸文は、7/30(金)に、2022年3月期第1四半期(4-6月)の決算を発表しました。昨年同期比で、売上高は40.0%の減収、営業利益は10.7億円の黒字転換となりました。
この丸文はネットネット株投資家として保有できる銘柄なのでしょうか?
以下の5つの要素を1つずつ確認してゆきます。
目次
丸文は、半導体・システム機器扱う独立系エレクトロニクス商社です。
したがって、個人的に投資対象から外している不動産業・金融業銘柄には該当しません。
この記事では、丸文の同業他社として、国内トップ級の独立半導体商社である 豊田通商系の半導体商社であるトーメンデバイス(2737)と東京エレクトロン系半導体商社である東京エレクトロン デバイス (2760)と比較してゆきます。
時価総額は192億円で、ネットネット株界隈では大きめの銘柄です。
売上高は増加傾向にあります。
2022年3月期予想が大きく減少しているのは、主に収益認識に関する会計基準が適用されるためだと思われます。
同業2社と比較すると、1998年以降、売上高が10倍にまで拡大したトーメンデバイスなどと比較すると、丸文の売上高成長は見劣りします。
営業利益は10億円から70億円のレンジで推移しています。一度も営業赤字を計上していない点は評価できます。
同業2社と比較すると、営業利益率の推移も丸文が劣後しています。
自己資本は拡大傾向にありますが、過去10年間で自己資本は1.22倍の成長に留まっています。
自己資本の成長の勢いが弱い点がやや気になります。
当企業の流動資産の内訳を見ると、売上債権が31%を占めています。
海外売上高比率は60.6%に達するため、この売上債券比率の高さには一応留意しておきたいところです。
負債の内訳を見ると、有利子負債は58%に達しています。
流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は347億円です。
時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.55になり、現時点でネットネット株に該当しています。
続いて、NCAVの過去10年間の推移を見ると、2014年以降は伸び悩んでいます。
2016年以降、ネットネット株指数1.0(グレーの線)以上に達したことはなく、株価回復力に期待を寄せることは難しそうです。
株価は過去3年間の底値圏である500円前後の水準からは脱しています。
このようにネットネット株指数からすると、まだまだ割安であるとはいえ、過去のネットネット株指数や株価水準に照らすと格安水準とまでは言えません。
半導体関連銘柄ということもあり、ROEは変動幅が大きくなっています。資金効率の問題点をデュポン分解して探ってみます。
当期純利益率は2%以下で推移しており、競争優位性の低さを窺わせます。
総資産回転率は2.0回を超えており、効率性は改善傾向にあります。2022年3月期の予想が落ち込んでいるのは、会計基準の変更が予定されているためです。
財務レバレッジは3倍を超えているものの、僅かに抑制傾向にあります。
こうして見ると、競争優位性に問題があるためか、純利益率が非常に低く、そのために資本効率性が低水準に留まっているように見受けられます。
営業CFの減少により、フリーキャッシュフローがマイナスに陥ることも多く、株主還元余力が乏しいように感じられます。
配当実績を見ると、増配と減配を繰り返しながらも、配当が支払われています。
現在の配当利回りはすでに4.38%であり、配当性向の推移から見ても増配余力はありません。
買収防衛策が導入されているうえ、特定株が51.3%の株式を保有しているため、アクティビストに狙われる可能性は乏しそうです。
半導体商社であるため、景気動向によって株価が大きく変動するシクリカル銘柄です。
企業規模はネットネット株にしてはやや大きめの銘柄です。
ネットネット株指数的には割安な銘柄になりますが、指数・株価ともに3年間の底値にあるわけではありませんし、純利益率が低いため、資本効率性に魅力がありません。また、フリーキャッシュフローや配当性向の推移、株主構成から見ても、株主還元が積極的に講じられることを期待できません。
したがって、ポートフォリオのメインに据える銘柄ではないように思います。少量の株式を保有した場合の目標株価は1,240円前後に設定できると思います。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。