資産バリュー株として有名な銘柄に宇野澤組鐵工所 (6396)という東証2部上場銘柄があります。
この宇野澤組鐵工所は、NCAV(流動資産-負債で正味流動資産を算出)式のネットネット株ではありませんが、都内に賃貸用不動産を所有しており、この不動産の時価を含めた正味流動資産は時価総額を大きく上回っています。
この宇野澤組鉄工所は、ネットネット株投資家として保有し得る銘柄なのでしょうか?
以下の5つの要素を1つずつ確認してゆきます。
目次
宇野澤組鉄工所は、ドライ式真空ポンプで圧倒的シェアを誇る設備機器メーカーです。
したがって、個人的に投資対象から外している不動産業・金融業銘柄には該当しません。
時価総額が29.2億円の超小型株です。したがって、一度注目を浴びれば急騰しやすい銘柄です。
売上高は緩やかな増加傾向にあります。
ただし、自己資本の拡大は過去10年間で23%に留まっています。
時価総額は低く、売上高が減少していない点は評価できます。
宇野澤組鉄工所は、通常のNCAV式のネットネット株(流動資産から総負債を差し引いた正味流動資産で計算)ではなく、含み資産株です。
したがって、棚卸資産は計算に含めず、賃貸等不動産の期末時価を加味した正味流動資産で割安性を判断します。
また、安全域を確保する観点から、賃貸不動産を売却する際には、税金や諸費用が掛かるため、賃貸用不動産は35%差し引いて評価することにします。
特に、宇野澤組鉄工所のバランスシート(貸借対照表)には、不動産売却時の繰延税金負債は計上されていないと思われるため、35%を差し引いて計算することは欠かせないステップです。
まず、賃貸不動産を含む高換金性資産の内訳を見ると、賃貸用不動産(時価✕0.65)が67%に達しています。
ちなみに、この賃貸用不動産は、JR「恵比寿」駅徒歩3分に位置する「ウノサワ東急ビル」です。
負債の内訳を見ると、有利子負債が53%を占めています。
高換金性資産から総負債を除いた正味流動資産は64.8億円です。
時価総額を正味流動資産で割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.45になり、ネットネット株相当の非常に格安なバリュー株になります。
続いて、高換金性資産の過去10年間の推移を見ると、僅かながらも拡大傾向にあります。
過去10年間、ネットネット株相当の水準に低迷しており、株価の回帰性を期待することは難しそうです。
2,600円前後の現在の株価は、過去3年間の底値圏からは脱した水準と言えます。
このようにネットネット株指数からすると割安ではありますが、過去のネットネット株指数や株価水準に照らすと、特別な割安感はありません。
ROEは大きく変動していますが、過去10年間で5回にわたり7%を超過しており、まずまずの資本効率性を記録しています。資金効率の内容をデュポン分解して探ってみます。
当期純利益率は3%前後であることから、収益性はけっして高くありません。
総資産回転率は60%前後であり、効率性も悪い企業です。
財務レバレッジは3倍程度に達しています。高めの水準ではありますが、危険視するレベルではありません。
こうして見ると、低収益や非効率を借入によって補っている構図が明らかになってきます。
フリー・キャッシュフローは比較的高い水準に達している年もあり、株主還元を期待したくなります。
2018年以降、配当が支払われており、株主還元姿勢が見られる点は高印象です。
配当利回りは1.15%に過ぎませんが、配当性向からすると継続的な増配は期待できません。
ちなみに、東急不動産が8.93%を保有しており、完成から40年を経過したウノサワ東急ビル(1981年完成)の今後も含めて、東急不動産の動向には留意したいところです。
買収防衛策は導入されていません。
時価総額が非常に小さく、比較的急騰しやすい銘柄です。
株価や過去のネットネット株指数的には、現在の水準が特別に安いようには思えませんが、ネットネット株指数が0.5を下回っている点は魅力的です。
さらに、純利益率や総資本回転率は改善の余地がありますが、ROEは比較的高めです。
フリーキャッシュフロー的にはさらなる株主還元は期待薄ですが,ウノサワ東急ビルの再開発を含め、大株主の東急不動産の動きに注目してゆきたい銘柄です。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。