資産バリュー株として有名な銘柄に、片倉工業(3001)という東証1部上場銘柄があります。
片倉工業は、ショッピングセンター等の不動産運営・賃貸、自動車部品等の機械製造販売、繊維製品の製造販売を行う企業です。
1920年設立ですから、昨年、創業100年を迎えた歴史のある旧財閥系の企業です。世界遺産に登録された富岡工場(富岡製糸場)を一時期操業していたことでも知られています。
片倉工業は、NCAV式のネットネット株ではありませんが、賃貸用商業施設(土地を含む)を有しており、これらの不動産を含めた正味流動資産は時価総額を大きく上回っています。
この片倉工業が今週月曜日(2021年2月15日)、2020年12月期の本決算を発表しました。売上高は▼10.0%の減収、最終益は+65.8%の増益を計上しました。
この片倉工業はネットネット株投資家の購入対象になり得る銘柄なのでしょうか?
①割安性・②収益性・③財務トレンド・④下方リスク・⑤テクニカル指標という5本のモノサシを使って、分析してみます。
目次
片倉工業は、通常のNCAV式ネットネット株(流動資産から総負債を差し引いた正味流動資産で計算)ではなく、含み資産株です。
したがって、棚卸資産を除外し、賃貸等不動産の期末時価(ただし、売却時の税負担分を控除するため、時価の65%を評価額として用いています)を加味した正味流動資産で割安性を判断します。
まず、賃貸不動産を含む換金性の高い資産の内訳を見ると、賃貸用不動産(時価×0.65)が65%にも達しています。



この賃貸用不動産には、埼玉県さいたま市の「コクーンシティ」や東京都中央区の「東京スクエアガーデン」といった優良物件が含まれています。
一方、負債内訳を見ると、有利子負債は24%です。



換金性の高い資産から総負債を除いた正味流動資産は697億円です。



時価総額を正味流動資産で割ったネットネット株指数は0.70になり、ネットネット株水準に近接した割安銘柄です。



まず、売上高は低下傾向にあります。



しかし、当期純利益については、2001年と2009年以外は黒字をキープしており、2021年12月期は過去最高益を予想しています。



1997年以降の平均ROEは2.52で低水準です。



片倉工業の財務トレンドはどのようなものでしょうか?
まず、含み資産を加味しないBPS(一株当たり純資産)は上昇トレンドを描いています。



また、賃貸用不動産(時価×0.65)を加味した正味流動資産は、2016年以降、右肩上がりです。



とはいえ、直近の株価は上昇しており、この銘柄としては割高になっている可能性はないのか、気になるところです。
そこで、下の図のネットネット株指数の推移を確認します。



過去10年間のネットネット株指数の平均値(期末時点)は0.79であり、0.5~1.2のレンジで推移しています。
現時点での指数は0.70ですから、比較的割安な水準と言えそうです。
有利子負債自己資本比率は20%超で推移していますが、許容範囲内です。



過去10年の割安圏にあるとは言えませんが、30週移動平均線の上で推移しており、悪くないチェート形状です。



棚卸資産を除外し、賃貸用不動産(時価×0.65)を加味したネットネット株指数が0.70と割安です。
過去10年間の平均ROEは2.52で、収益性は低水準です。
しかし、正味流動資産は上昇トレンドにあり、株価は上昇していても割安な状態が保たれています。
有利子負債自己資本比率は許容範囲内であり、テクニカル指標的にも問題はありません。
不採算事業から撤退し2021年度は過去最高益を予想していること、自社株買いを実施していること、買収防衛策が未導入であることなどは好印象です。
こうした点を総合的に考慮に入れると、個人的には、片倉工業はポートフォリオの一部に組み入れてゆきたい銘柄です。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。