米国NCAV式ネットネット株の解説をした”The Net Current Asset Value Approach To Stock Investing”という本を読みました。
過去のデータが非常に豊富で、インターネットでは接することのできない貴重な情報が得られるので、興味のある方はぜひ直接お読みいただきたい本です。
この本の中に大変興味深いデータが記されていましたので、簡潔にご紹介します。
以下の表は、1951年から2010年にかけてのNCAV式ネットネット株(ここでは、ネットネット株指数0.75以下)の銘柄数をまとめたものです。



ベンジャミン・グレアムは、大恐慌期の1932年には、ニューヨーク証券取引所の全株式の40%以上がNCAVを下回っていたと述べましたが、1950年代初頭にはその数が20前後にまで減少していました。
1960年代後半や、1980年代から2000年代にかけて、ネットネット株の数が1桁で推移する年が多くあったことを確認できます。
下の表は、ネットネット株が10銘柄以上存在した年にのみ、ネットネット株ポートフォリオを組み、投資した場合のパフォーマンスを示したものです。



NCAVポートフォリオの平均リターンは27.69%に対して、S&P500指数のリターンは11.17%でした。
また、NCAVポートフォリオは、75.76%の年でS&P指数をアウトパフォームしています。
このように十分な数のNCAV型のネットネット株に投資できるならば、圧倒的なパフォーマンスを上げることができます。
下落相場に焦点を当てると、3つの時期に注目できます。
まず第一に注目できるのは、激しいインフレによって相場が下落した1973年です。NCAVポートフォリオがS&P500指数を大きくアンダーパフォームしました。小型株の変動性の大きさゆえに、下落局面の初期においては、ネットネット株が大きく下落する可能性があることを示唆しています。
第二に注目できるのは、ドットコムバブルが崩壊した2000年です。この2000年には、ネットネット株ポートフォリオもマイナスリターンになったものの、翌年には41.61%の好パフォーマンスを残しています。やはり1973年と同様、下落局面の初期において、全体指数に引きずられる形でパフォーマンスを悪化させるものの、下落局面の後期には持ち直しの動きに入りやすい可能性を感じさせます。
第三に、リーマンショック後の底を確認した2009年です。2009年も下落局面から脱した年であり、89.33%と大きく上昇しています。
こうして振り返ると、ネットネット株ポートフォリオは、下落局面の初期には、全体相場と共に大きく下落する傾向があるものの、下落相場の後期から上昇を始め、リターンを大きく上昇させる傾向がありそうです。
もちろん、ネットネット株ポートフォリオの平均リターンの高さを考慮すると、投資対象銘柄がある限り、フルインベストでホールドしても、十分なリターンを得られます。
とはいえ、下落局面が間近に迫っていると考えるならば、一部を現金に振り分けて、キャッシュポジションを温存しておき、下落局面後期に買い集めるという戦略を持つことができそうです。言うは易し行うは難しですが・・・。
個人的には、現在、40%程度のキャッシュポジションを保有していますが、このデータを見て、もう少しキャッシュポジションを拡大してゆきたいと感じました。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。