60年間の米国ネットネット株投資のパフォーマンスから学べること(3)

先日、米国NCAV式ネットネット株の解説をした”The Net Current Asset Value Approach To Stock Investing”という本を読みました。

過去のデータが非常に豊富で、インターネットでは接することのできない貴重な情報が得られるので、興味のある方にはぜひ直接お読みいただきたい本です。

この本では、1950年から2010年までの60年間の、NCAV型ネットネット株のパフォーマンスデータがまとめられており、適正な保有期間を示すデータも集計されています。

前提条件

この本のデータは以下の条件に基づいて集計されています。

  • ネットネット株とはNCAV式のネットネット株指数が0.75未満の株式のこと。
  • ポートフォリオ内の1銘柄の投資割合は最大10%に限定する。
  • 配当と手数料が含まれる。
  • 毎年最終営業日に取引を行ったものと仮定する。

売却タイミングについての考察

以下のグラフは、1951~2009年にかけてのNCAV型ネットネット株の保有を継続した場合の平均リターンを示したものです。

1年後は19.89%のリターンを出しているのに対し、2年後以降はリターンが減少し、5年後には14.93%にまで低下しています。

このことは、ネットネット株の場合、ひたすら長期間保有するのではなく、NCAV水準など一定のラインに到達したならば、速やかに売却し、利益を確定したほうが良いことを示しているように思います。

一方、運悪く最もリターンが悪いネットネット株を保有した場合、いずれのタイミングで売却するのが望ましいのでしょうか?

次のグラフは、最も悪い成績を残した銘柄を保有した場合のリターン推移を示したものです。

1年後はわずか1.75%のリターンに留まっていますが、2年後以降しだいに上昇し、5年後には11.34%のリターンを出すほどになっています。

つまり、他の割安銘柄が表れない限り、そのままホールドを続けるならば、一定のリターンの果実を得られる可能性が高いことを示しています。

まとめ

上記の約60年間のデータを通して、NCAV型ネットネット株の場合、NCAVラインなど一定の水準まで「噴いたら売る」という方針を採用することが望ましいようです。

もちろん、保有を継続して成功を収めている著名なディープバリュー投資家もいますが、利を伸ばすには、資産面だけでなく、収益面での安全域を確保し続ける必要がありそうです。

一方、値上がりしないネットネット株であっても、他の割安株が登場しない場合には、そのままホールドを続けていれば、2~3年後にはある程度報われる可能性が高そうです。

言い換えれば、資産状況に変化がなく、他の乗り換える割安株がないにもかかわらず、値上がりしないという理由だけで売却する必要はありません。

いずれにしても、噴き上げた時に売却できる「規律」と値上がりしなくても保有を続ける「忍耐」が求められることになります。

今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。

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