先日、米国NCAV式ネットネット株の解説をした”The Net Current Asset Value Approach To Stock Investing”という本を読みました。
過去のデータが非常に豊富で、インターネットでは接することのできない貴重な情報が得られるので、興味のある方はぜひ直接お読みいただきたい本です。
この本の中には、1950年から2010年までの60年間のNCAV型ネットネット株のパフォーマンスデータがまとめられています。
目次
この本のデータは以下の条件に基づいて集計されています。
- ネットネット株とはNCAV式のネットネット株指数が0.75未満の株式のこと。
- ポートフォリオ内の1銘柄の投資割合は最大10%に限定する。
- 株式相場が高値圏で推移している時期には、ネットネット株が10銘柄に達しないことがある。その場合は、T-Bill(国庫短期証券)で運用する。
- 配当と手数料が含まれる。
- 毎年最終営業日に取引を行ったものと仮定する。
1950~2010年にかけてのNCAV型ネットネット株とS&P500指数の比較は以下のグラフのとおりです。



ネットネット株が市場から消え、T-Billに投資せざるを得ない期間があったにもかかわらず、S&Pを圧倒しています。
もちろん、小型株の多いネットネット株で購入できる数量には限界があるため、このとおりのパフォーマンスを再現することは困難ですが、資産が一定の水準に達するまでは再現することを期待できます。
そこで、10年単位のリターンを確認してゆきます。
S&P500指数が堅調に推移した1950年代、57年までNCAVはアンダーパフォームしていましたが、1958・59年に大きくリターンを伸ばしました。



1950年に投じた資金は10年後に5.87倍に成長を遂げました。
大型好景気が続き黄金時代と言われた1960年代、S&P指数が10年間で2.1倍に成長したのに対し、NCAVポートフォリオは8.74倍にまで拡大しました。



米国経済が混迷を深め、インフレが進んだ1970年代、S&P指数は1.7倍に拡大しました。
その一方、NCAVは、73年から74年にかけて苦戦を強いられるものの、結果的には10年間で5.1倍に拡大しています。



大型の好景気が続いた1980年代、1988年までNCAVポートフォリオがアウトパフォームしていましたが、結果的にはS&P指数のほうが好パフォーマンスが得られることになりました。
とはいえ、NCAVでも10年間で、3.39倍に達しています。



NCAV型ポートフォリオが不調に思えますが、これはネットネット銘柄数が足りず、T-Billへの投資割合が多いことが主な要因です。それでも、10年間で4.7倍に達しました。



S&P指数がITバブル崩壊やリーマンショックにあえぐ中、NCAVポートフォリオは拡大し、最終的には11.86倍に拡大しています。



1980年代と90年代、NCAV型ポートフォリオはアンダーパフォームしましたが、これは主に、十分な数のネットネット数を組み入れることができなかったことによるものです。
したがって、過去60年間においては、どのような経済情勢でも、NCAV型のポートフォリオは満足のいくリターンを残していたことを示しています。
いずれにしても、大きな課題になってきたのは十分なネットネット株をポートフォリオに組み入れることができるか、ということでした。現在の日本の市場には、60を超えるNCAVネットネット株が存在しており、そのような環境にあることは、ある意味で資産を拡大させる大きなチャンスだと言えるかもしれません。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。