ネットネット株と上場維持コスト

ネットネット株の中には、時価総額が非常に小さい銘柄があります。

この記事では、そのような小型ネットネット株にとって、上場維持コストがどれほどの負担になっているのか、考えてみました。

ネットネット株の時価総額

9月27日終値時点におけるNCAV式ネットネット株44銘柄の時価総額別の銘柄数は次のようになっています。

一般的には株式の時価総額1000億円未満の銘柄が「小型株」と定義づけられています。

すべてのネットネット株が350億円未満に分布しており、その中でも時価総額100億円未満に64%のネットネット株が集中しています。

この要因としては、時価総額の小さい銘柄には機関投資家が参入しにくく、割安に放置されやすいことが挙げられると考えられます。

時価総額100億円未満のNCAV式ネットネット株には次のような28銘柄が含まれます。

コード銘柄時価総額
(億円)
6416桂川電機10.4
8995誠建設12.6
2137光ハイツ・ヴェラス15.5
7422東邦レマック16.0
7314小田原機16.5
3600フジックス23.2
7922三光産業25.1
8139ナガホリ30.0
6943NKKスイッチズ39.9
7427エコートレーディング40.7
8152ソマール42.1
2917大森屋43.6
5900ダイケン45.0
7338インヴァスト46.7
6964サンコー50.9
7887南海プライウッド56.2
3952中央紙器工業59.0
5979カネソウ59.4
6142富士精工60.0
4957ヤスハラケミ61.4
2055日和産業66.0
2982ADワークスグループ72.3
8046丸藤パイル81.4
6303ササクラ81.7
9885シャルレ82.0
7235東ラヂエタ86.7
4231タイガースポリマー87.1
5921川岸工92.0

上場維持コスト

企業が上場を維持するには、上場料金だけでなく、内部統制にかかるコストや株主管理にかかるコストが必要です。

産業能率大学の倉田洋教授は、「上場企業と非上場化 ~なぜ上場企業が非上場化の道を選ぶのか~」(産業能率大学紀要第32巻第2号)18-19ページの中で、以下の8つの代表的なコストを挙げています。

  1. 株主の管理・対応費用(証券代行手数料など)
  2. 監査法人による監査費用
  3. 上場企業に課される会計報告費用(決算短信や有価証券報告の作成など)
  4. 上場料金(年間、証券取引所へ納付)
  5. 株主総会の運営(想定問答集の作成や会場関連費用)など多大な費用と時間の浪費
  6. 上場企業に義務とされている内部統制関連費用
  7. IFRSへの会計制度への変更に伴う費用
  8. IR関連費用
「上場企業と非上場化 ~なぜ上場企業が非上場化の道を選ぶのか~」(産業能率大学紀要第32巻第2号)19ページ

④年間上場料金については、50億円以下の場合は、東証1部が96万円、東証2部が72万円、JASDAQが100万円などと低く抑えることができるようです。

とはいえ、倉田氏は、「おおよそ上記のコストをまとめて考えると、企業規模にもよるが最低でも年間1億円超のコストがかかると言われている」と指摘しています。

つまり、上場を維持していることで、毎年1億円の利益が目減りしていることになります。

以下の表は、ネットネット株の直近1年間の純利益です。

コード銘柄純利益
(億円)
6416桂川電機-7.45
8995誠建設1.13
2137光ハイツ・ヴェラス1
7422東邦レマック-1.92
7314小田原機1.32
3600フジックス1.37
7922三光産業-1.33
8139ナガホリ-3.31
6943NKKスイッチズ0.62
7427エコートレーディング2.42
8152ソマール2.73
2917大森屋1.83
5900ダイケン2.96
7338インヴァスト0.6
6964サンコー5.69
7887南海プライウッド5.01
3952中央紙器工業1.71
5979カネソウ0.85
6142富士精工-0.24
4957ヤスハラケミ3.33
2055日和産業1.39
2982ADワークスグループ2.64
8046丸藤パイル6.98
6303ササクラ5.76
9885シャルレ-13.29
7235東ラヂエタ1.06
4231タイガースポリマー7.69
5921川岸工8.01

大半の企業が数億円程度の最終利益しか計上していませんから、1億円以上とも言われる上場維持コストが決して無視できるものではないことになります。

まとめ

このように多くのネットネット株企業にとって、上場維持コストは決して無視できる額ではありません

もちろん、上場維持には信用力の向上や良い人材を集めやすいこと、経営者や従業員のステータスシンボルになることなど、大きなメリットがあります。

とはいえ、割安に放置されているネットネット株の場合、敵対的買収のリスクなど、コスト以外のデメリットもあります。

また、ネットネット株水準の株価に甘んじていること自体、経営者にとっては恥ずかしい、「逆ステータスシンボル」になっていることも多いでしょう。

したがって、ネットネット株、特に時価総額が100億円に達しない企業では、非上場化に向けて動き出す銘柄もある考えています。

こうした点を考慮して、時価総額100億円未満のネットネット株でポートフォリオを組むことを検討してみるのも良いかもしれません。

今回もお読みくださり、ありがとうございました。

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