2022年前半に読んだお薦め書籍5冊

読書メモなどを振り返ると、2022年前半は、仕事関連の書籍を含め40冊弱の本を読みました。

その中で、皆さんにご紹介したいお薦めの書籍5冊をご紹介しています。

バリュー投資や財務分析関連の書籍も読みましたが、残念ながら、思考を刺激するようなインパクトのある本との出会いはありませんでした。その一方で、不確実性が増す経済環境の理解を深め、リスク管理に役立ちそうな本を読むことができましたので、そのような書籍を5冊ピックアップして、ご紹介します。

『新しい世界の資源地図―エネルギー・気候変動・国家の衝突』

米国・ロシア・中国・中東諸国が、エネルギーを巡り、どのように動いてきたかが明快に論じられています。

「ロシアの地図」というタイトルの部では、エネルギー問題の視点から、ロシアによるウクライナ侵攻を予測していたかのような記述が含まれています。

ロシアと西側諸国の新たな敵対関係(新たな冷戦)の最も重要な原因を1つ選ぶとしたら、それはソ連の崩壊とその後の展開の中で生じ、いまだに解決されていない難題であるウクライナ問題になるだろう

第10章「天然ガスを巡る危機」

こうしたロシアの安全保障戦略に加えて、米国のシェール革命、中国の海洋戦略、中東のエネルギー戦略の背景、自動車・気候変動問題の今後などが幅広く扱われています。

投資家として求められる地政学・エネルギー・安全保障などの理解を、この本一冊でアップデートすることができ、ぜひお読みいただきたいお勧め本です。

『最後の防衛線 危機と日本銀行』

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元日銀副総裁であり、次期総裁候補として名前が挙がる中曽宏氏による著作です。

1990年代の日本の金融危機と、2008年の国際金融危機という2つの大きな金融危機に、日銀の現場部署でいかに対応したか克明に記録されています。

中曽氏は、上記の経験を踏まえ、危機に直面した際に組織が共有すべき「危機対応の要諦」ともいえる3つの行動原則を紹介しています。

  1. 悪いニュースほどいち早く共有を
  2. 最悪に備え、最善を祈る
  3. 強い使命感と目標の共有

「最悪に対する準備をしつつ最善を祈る」姿勢を学ぶという観点からも、次期日銀総裁候補の背景を知っておくという観点からも、一度お読みすることをお勧めしたい書籍です。

『国家は破綻する――金融危機の800年』

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本書では、国家の債務破綻、デフォルト、ハイパーインフレ、民間の銀行危機をデータベース化し、共通パターンがあることを論じています。

共通パターンを生み出す理由について、このように説明されています。

傲慢と無知は、どの時代にも、どんな政治制度の下でも、人間の性質に普遍的に見られる特徴である。最初に現れるのは、金融危機がどれだけひんぱんに起きているかを知らない、という無知である。・・・人間の性質に備わったもう一つの欠点は、傲慢である。金融危機は、どこかよその国、よその時代のよその人に起きる出来事だと思い込むのは、傲慢のなせる業である。政策当局、投資家、メディアは、たびたび「今回はちがう」という言葉を口にしてきた。債務が膨らみ資産価格が急上昇しても、今回はこういう理由があるから何も心配はいらない、木が月に届くまで伸びることだってあるのだ、と。

「日本語版への序文」

「自国通貨建通貨のデフォルトは生じ得ない」という意見を見聞きしますが、その「生じ得ないこと」が頻繁に起きてきたことを学べるだけでも、この本を読む価値を見いだせると思います。

『国債リスク 金利が上昇するとき』

金利ストラテジストの森田長太郎氏の著作です。

長い間、「発行過大で返済困難になる」と指摘されてきた日本国債が、今のところ順調に消化されてきたメカニズムが分かりやすく説明されています。

また、将来、日本国債が破綻に至るパスを、確率を付与して整理された図式が掲載されています。この将来パスによれば、現在の経済状況が通常の状況(実質GDP成長率が+1%~+3%)であり、国債購入が継続される場合は、「財政悪化が加速」していくことになります。仮に、現在の経済状況が景気低迷の状況(実質GDPが+1%以下)に陥り、インフレ目標が達成し、国債購入を継続した場合は「ハイパーインフレーション」に至ることになります。

この書籍では、個人投資家が「テールリスク」にどう対処すべきかも明記されています。

「テールリスク」を避けるには、リスクがテールと認識されている間に何らかのヘッジ行動を起こさなくては意味がないというのが唯一の答えと言えそうです。そのため「テールリスク」が若干上昇してきたぐらいのタイミングで、何かしらのアクションを起こすということは、個人投資家が自分の大事な資産を守るという観点からは悪い方法ではありません。

現在はまさに「『テールリスク』が若干上昇してきたタイミング」と言えるのではないか、という方にぜひお読みいただきたい書籍です。

『大惨事(カタストロフィ)の人類史』

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大地震や火山の噴火、世界大戦、飢餓、原発事故など人類が経験してきた大惨事や事故に共通する構造が、ネットワーク理論やカオス理論などの最先端の知見をもって明らかにされた本です。

カタストロフィの歴史研究から得られる一般的な教訓として、次のような点が挙げられています。

  • 大多数の惨事は予測することはおろか、それぞれに確率を割り当てることさえも到底できそうにない。地震から戦争や金融危機まで、歴史における大きな混乱は、ランダム分布や冪乗分布を特徴としてきた。それらは、リスクではなく不確実性の領域に属している。
  • 惨事はあまりに多くの形を取るので、型どおりのリスク緩和の取り組みでは処理できない。
  • すべての惨事が世界規模であるわけではない。
  • いつの時代であっても、激しい社会的ストレスがかかるときには、宗教的あるいは似非宗教的なイデオロギーの衝動が、合理的な対応を妨げる傾向がある。

その上で、このように結論付けられています。

将来起こりうる惨事については、・・・あらゆる惨事のうちのどれがいつ襲ってくるかは、どうにも知りようがない。私たちには、歴史から以下の方法を学ぶぐらいがせいぜいだ。すなわち、少なくともレジリエンスのある、うまくすれば反脆弱な社会構造と政治構造の作り方や、惨事に圧倒された社会の特徴となりがちな自虐的なカオスに陥るのを避ける方法、私たちの不運な種と脆弱な世界を守るためには全体主義的な支配あるいは世界政府が必要だと甘くささやく声に抗う方法を。


上記の5冊の書籍は、投資技術のブラッシュアップに直接役立つ本ではありませんが、現在の経済環境に対する理解を深めたり、リスク耐性を強めるポートフォリオを組んだりする上で大きな助けになる本です。

もしお読みでない本があれば、手に取ってご覧になることをお勧めします。

今回もご覧くださり、どうもありがとうございました。

1 COMMENT

my20001

おはようございます。

早速の書評、ありがとうございました。
また順々に読みたいと思います。

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