11月16日時点のNNWC式ネットネット株の1つに東京汽船 (9193)という東証スタンダード銘柄があります。
東京汽船は、東京湾内の曳船(エスコート)サービス会社です。
具体的には、以下のようなサービスを提供しています。
- ハーバータグ業務(曳船サービス、離着岸作業、横浜・川崎・千葉・横須賀港)
- エスコート業務(東京湾/浦賀水道・中ノ瀬航路、エスコートタグボート、水先艇運航、離着桟補助業務、警戒船業務)
- 緊急時サポート・防災業務(海難救助、警戒船作業、流出油の防除作業、消化作業、人命救助)
- 洋上風力発電アクセス船(目的特化型の交通船)、所有船舶の貸船サービス
- 海外曳船ネットワーク(香港)、国内曳船会社ネットワーク
- マリン(交通船業務、カーフェリー/久里浜〜千葉・金谷、観光船/横浜港内)
この東京汽船は、11月11日に23年3月期第2四半期(4-9月)を発表しました。前年同期比で、売上高は+1.4%の増収、営業利益は1.95億円の赤字から1.14億円の赤字に縮小しました。
このような東京汽船は、ネットネット株投資家として、保有継続し得る銘柄なのでしょうか?
この記事では、次の6つの視点をチェックしてゆきます。
目次
当企業の資産内訳(NNWCの計算式適用後)を見ると、現金預金が93億円に達しており、安定的な財務内容です。3か月前と比べて、3億円ほど減少しています。



負債の内訳を見ると、有利子負債が32億円に達しています。ただし、有利子負債倍率は0.2を下回っており、問題のない水準です。長期借入金の平均利率は0.403%でやはり問題ありません。



総負債を除いたNNWC(正味流動資産)は81億円です。3か月前と比較して、NNWCは2億円増加しています。



時価総額をNNWCで割ったネットネット株指数(P/NNWC)は0.56になり、現時点でネットネット株に該当しています。
過去6年間のNNWCの推移を見ると、減少傾向にあります。



ネットネット株指数は、コロナショック直後の割安水準を割り込んでおり、非常に割安です。とはいえ、過去6年間にネットネット株指数が1.0を上回ったことはなく、バリュートラップに陥っている可能性もあります。



1999年以降、売上高は緩やかな減少傾向にあります。



コロナの影響により、2021・22年の営業利益が赤字転落し、23年も赤字予想になっています。



過去10年間でBPSは1.29倍ほどの拡大に留まっています。



ROEは低下傾向にあり、2007年を最後に7%を超えたことがありません。



営業キャッシュフローはプラスを維持しており、大半の年でフリーキャッシュフローもプラス圏に留まっています。



このようにキャッシュフローが比較的安定しているため、業績改善の見通しが立つ際には、配当や自社株買いなどの株主還元策を期待したいところです。
1999年以降、無配に転落したことはありません。配当利回りは2.2%です。



東京湾を中心に事業を展開しているため、首都圏直下型地震などにより、一時的に事業が継続できなくなったり、保有する船舶が津波の被害に見舞われたりする可能性があります。
東日本大震災が発生した2011年3月の月間騰落率は△5.44%、コロナショックが発生した2020年2月から3月にかけての2ヶ月間の期間騰落率は△21.25%でした。2020年2月時点で既にネットネット株に近い水準であったことを考えると暴落耐性を持たない銘柄と言えそうです。
買収防衛策は導入されていません。
BBHフィデリティ・ロープライスドストックファンドが6.8%の株式を保有しています。
現時点でキャッシュリッチなNNWC式のネットネット株です。
コロナの影響により、業績が悪化している上、長い間ネットネット株に甘んじていることから、バリュートラップに陥っている可能性も感じさせます。また、災害などのリスク耐性の乏しい銘柄に思えます。
しかし、経験上、このような買い根拠の乏しいネットネット株は思いも寄らぬタイミングで急騰することがあるため、個人のポートフォリオに少量加えている銘柄です。810円前後を目指して株価が上がってゆくことを願っています。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。