資産バリュー株として知られる銘柄に三菱地所 (8802)があります。
この三菱地所は、NCAV(流動資産-負債で正味流動資産を算出)式のネットネット株ではありませんが、賃貸用不動産を多く所有しており、この賃貸用不動産を含めた正味流動資産は時価総額を上回っています。
この三菱地所は、ネットネット株投資家として保有し得る銘柄なのでしょうか?
以下の7つの要素を1つずつ確認してゆきます。
目次
三菱地所は、三菱グループの総合不動産企業で、不動産ディベロッパーとして東京大手町・丸の内・有楽町に30棟以上のビルを所有する「三菱村」を形成していることで知られています。
したがって、個人的に投資対象から外している不動産業銘柄に該当します。
この記事では、三菱地所の同業他社として、同じく財閥系不動産会社の三井不動産(8801)と住友不動産(8830)を比較対象にしてゆきます。
三菱地所は、通常のNCAV式のネットネット株(流動資産から総負債を差し引いた正味流動資産で計算)ではなく、賃貸用不動産を正味流動資産に加味した形でのネットネット株です。
したがって、棚卸資産は計算に含めず、賃貸用不動産(時価)を加味した正味流動資産で割安性を判断します。
まず、賃貸不動産を含む高換金性資産の内訳を見ると、賃貸用不動産(時価)が97%に達しています。



ちなみに、この賃貸用不動産には次のような施設が含まれています。






負債の内訳を見ると、有利子負債は65%に達しています。



高換金性資産から総負債を除いた正味流動資産は4兆4213億円です。



時価総額を正味流動資産で割ったネットネット株指数は0.52になり、現時点では、ネットネット株相当の割安性を十分に有しています。



2016年以前はネットネット株指数1.0水準を回復しており、株価の回帰性をある程度は期待できそうです。



続いて、正味流動資産の過去10年間の推移を見ると、拡大傾向が続いています。



バリュートラップの危険性は乏しいように思われます。
売上高は右肩上がりです。



売上高成長を他社と比較すると、三井不動産よりは伸びているものの、住友不動産には劣後しています。



営業利益も順調に伸びています。



売上高営業利益率は、住友不動産に次ぐ水準で推移しています。



BPSは過去10年間で1.59倍に拡大しました。



売上高・営業利益率・BPSが拡大している点は好印象です。
ROEは7%台で推移しており、資本効率性が比較的良い企業です。資金効率の内容をデュポン分解して探ってみます。



最終損失を計上した年が2002年のみになっている点も評価できます。
また、当期純利益率は10%を超えており、収益性は良好であり、経済的な「堀」を持った企業と言えます。



しかし、不動産系企業であるため、総資産回転率は0.2回程度で推移しており、効率性が非常に悪い企業です。



財務レバレッジは3倍程度で推移しています。



こうして見ると、不動産企業らしく、収益性は良いものの、総資産回転率は低く、財務レバレッジは高めに推移しています。
フリー・キャッシュフローは2021年にマイナスに転落しました。



しかし、この数年間、営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスで推移しており、健全です。2021年に財務CFがプラスに転換したのは社債発行によるものです。
1998年以降、増配傾向です。



配当利回りは1.99%、配当性向は30%前後で推移しており、増配余力はあります。
1,600円台の現在の株価は、過去3年間の底値から28%程度上昇しており、底値圏水準とは言えません。



買収防衛策は導入されていません。
売上高・営業利益・BPSともに増加傾向にあります。
株価は下がってきていますし、含み資産を加味したネットネット株指数的には、現在の水準はかなりの割安に思えます。
したがって、現在の株価水準で保有しても下値は限定的であるように感じますが、もうひと押しした水準で購入してみたい銘柄です。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。