最近、ネットネット株水準に近づきつつある銘柄にリョーサン(8140)という東証1部銘柄があります。
このリョーサンは、ネットネット株投資家として、購入し得る銘柄なのでしょうか?
結論を申し上げると、「ネットネット株水準ではポートフォリオに組み入れたい銘柄」です。
なぜ、そのような結論に至るか、1つずつ確認してゆきます。
目次
リョーサンは、ルネサスエレクトロニクス製品を多く扱う独立系の半導体商社大手企業です。
したがって、不動産業や金融業銘柄ではありません。
この記事では、比較対象銘柄として、UKCホールディングスとバイテックHDが統合した半導体商社レスターホールディングス(3156)と三菱電機系商社で半導体を扱う菱電商事 (8084)を取り上げます。
8月20日(終値:2,072円)の時価総額は518億円で、ネットネット株界隈では大きめの企業です。
当企業の流動資産の内訳を見ると、売上債権が54%を占めています。海外売上高が48.5%を占めるため、やや注意が必要です。


負債の内訳を見ると、有利子負債は33%です。



流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は741億円です。



時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.70になり、現時点でネットネット株に該当していません。



2020年2月以前には、ネットネット株指数が1.0を大きく上回っており、指数の回帰性に期待することができそうです。



NCAVは減少傾向にあります。



売上高は、半導体銘柄であるため変動幅は大きいうえ、長期的には僅かに減少傾向です。



類似企業と比較すると、レスターの売上高には遠く及びません。



営業利益は1998年以降、赤字に転落したことはありませんが、緩やかな下降トレンドをたどっています。



類似企業の営業利益率と比較すると、2021年3月期のリョーサンは最も高収益になっています。



ROEは、2001年を最後に、7%を超える水準に達していません。資本効率の課題をデュポン分解して探ってみます。



純利益率は1%程度の水準で推移していますが、1998年以降、最終赤字を計上していない点は評価できます。



総資産回転率は1.5回程度です。



財務レバレッジは1.7倍程度です。



資本効率性の向上のためには、純利益率のさらなる上昇が必要です。
自己資本はまったく伸びていません。



営業キャッシュフローがマイナスに転落する年が散見されます。
また、フリーキャッシュフローがマイナスに転落する年度も多くあります。



このようにキャッシュフローが不安定であるため、配当や自社株買いなどの安定した株主還元策を期待できません。
しかし、1999年以降、安定した配当支払実績を持っています。



現在の株価は、過去3年間安値からは11.7%程高い水準にあり、2,000円割れの水準では底値圏と言えそうです。



買収防衛策は導入されていません。
英国のアクティビストであるシルチェスターが18.19%の株式を保有しているようです。
現時点ではネットネット株ではありませんが、ネットネット株指数的にも株価的にも割安になってきました。
また、売上高や営業利益は減少トレンドにあるわけではなく、1998年以降最終赤字を計上していない点は評価できます。
キャッシュフローは不安定であるため、株主価値を高めるような施策を期待することが困難であるように思われますが、シルチェスターの動向次第では株価が上昇する局面があるかもしれません。
上記の点からすると、ネットネット株水準ではポートフォリオに組み入れておきたい銘柄です。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。