ニッピ(7932)の銘柄分析 ― カタリスト豊富な含み資産株

資産バリュー株として有名な銘柄に、ニッピ(7932)という東証JASDAQ上場銘柄があります。

ニッピは、ゼラチン、コラーゲン、化粧品等を主力事業とする企業です。

ニッピは、NCAV式のネットネット株ではありませんが、賃貸用不動産を所有しており、この賃貸不動産を含めた正味流動資産は時価総額を上回り、資産バリュー株となっています。

資産バリュー株と言われる銘柄には旧財閥系企業が多いのですが、ニッピもまた、旧大倉財閥の企業です。

では、このニッピはネットネット株投資家としてもホールドできる銘柄なのでしょうか?

①割安性・②収益性・③財務トレンド・④下方リスク・⑤カタリストという5本のモノサシを使って、分析してみます。

ニッピの割安性:

ニッピは、通常のNCAV式ネットネット株(流動資産から総負債を差し引いた正味流動資産で計算)ではなく、含み資産株です。

したがって、棚卸資産を除外し、賃貸等不動産の期末時価を加味した正味流動資産で割安性を判断します。

また、安全域を確保する観点から、賃貸不動産を売却する際には、税金や諸費用が掛かりますので、賃貸用不動産は35%差し引いて評価することにします。

まず、賃貸不動産を含む換金性の高い資産の内訳を見ると、賃貸用不動産(時価✕0.65)が63%に達しています。

この賃貸用不動産は、東京都と大阪府に立地しています。

一方、負債内訳を見ると、有利子負債は51%に達しています。

換金性の高い資産から総負債を除いた正味流動資産は64.7億円です。

時価総額を正味流動資産で割ったネットネット株指数は1.72になり、割安ではありますが、ネットネット株には該当しません。

ニッピの収益性:

現在の株価は、3,000円台前半です。

2014年以降、3,000~5,000円のレンジ相場になっています。

出典:SBI証券

株価と比較して、収益性はどのような状態にあるでしょうか?

過去10年間の売上高は、僅かではありますが上昇トレンドをたどっています。

また、当期純利益を見ると、過去10年間で最終赤字を計上した年はありません。

過去10年間の平均ROEは5.14で、収益性はまずまずです。

ニッピの財務トレンド:

ニッピの財務トレンドはどのようなものでしょうか?

まず、含み資産を加味しないBPS(一株当たり純資産)は上昇トレンドにあります。

また、賃貸用不動産を加味した正味流動資産(換金性の高い資産-総負債)は、マイナス圏で推移しているものの一貫して上昇しています。

2020年9月期は正転し、正味流動資産は64.7億円に達しています。

正味流動資産は時価総額を下回っているため、ネットネット株には該当しませんが、割安度が増すトレンドにあることは確かです。

ニッピの下方リスク:

有利子負債自己資本比率は71.8%、流動比率は113.92%で、あまり好ましくない水準です。

また、他の含み資産株と同様、賃貸不動産はあまり分散されていませんので、地震などにより不動産に被害が生じた場合、資産価値が毀損する可能性があります。

したがって、有利子負債の多さや災害リスクを考慮に入れると、この銘柄に集中投資するのではなく、分散銘柄の一つとして保有したほうが良いかもしれません。

ニッピのカタリスト:

まず、賃貸用不動産の収益性向上がカタリストになります。大阪府の賃貸用不動産は、これまで平面の時間貸し駐車場になっていましが、半分の土地にハイエンドホテルがオープンすることが決まっています。このホテルがオープンした暁には、賃料が大幅に上昇することになります。残り半分の土地の活用方法によっては、株価も大きく上昇することでしょう。

また、筆頭株主であるリーガルコーポレーションとの間で、大量の持合株式があるため、この状態を解消を目指したTOB思惑が生じやすくなっています。

さらに、再生医療関連株であるため、周期的に材料視される可能性があります。

このようにカタリスト候補は多くあり、株価急騰は時間の問題という気がします。

まとめ:

銘柄評価
割安性
(1.0)
収益力
(3.0)
財務トレンド
(3.0)
下方リスク
(1.0)
カタリスト
(5.0)
総合評価
(2.0)

棚卸資産を除外し、賃貸用不動産(時価✕0.65)を加味したネットネット株指数が1.72となり、割安ではありますが、十分な安全域が確保されているとは言えません。

しかし、過去10年間の平均ROEは5.14で、収益性はまずまずです。

正味流動資産は上昇傾向にあり、さらに割安性が増す可能性が高まっています。

有利子負債が多く、不動産が分散されていないため、一定の財務リスク・災害リスクがありますが、分散された投資対象としては問題ありません。

また、賃貸用不動産の有効活用、リーガルコーポレーションのTOB、再生医療事業の進展などのカタリストが発動した場合は、株価が急騰する可能性があります。

こうした5つの観点を総合的に考慮に入れると、個人的には、現時点での購入は見合わせますが、株価が下がった時点で、ポートフォリオの一部に組み入れておきたい銘柄です。

今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。

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