ネットネット株の中に東京ラヂエーター製造(7235)という東証2部上場銘柄があります。
先週、親会社のマレリが3月上旬にも、第三者機関に事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)の活用を申請する見通しであることが報道されました。
この経営難に陥る親会社を持つ東京ラヂエーター製造は、ネットネット株投資家として引き続き魅力的な銘柄なのでしょうか?
以下の7つの要素を1つずつ確認してみます。
目次
東京ラヂエーター製造は、マレリ傘下のトラック・建機向け主体の熱交換器メーカーです。主な取引先はいすゞ自動車です。
したがって、個人的に投資対象外としている不動産・金融銘柄ではありません。
この記事では、東京ラヂエーターの同業他社として、トヨタ系の熱交換器機メーカーのティラド(7236)と、いすゞ系の自動車プレス部品最大手のプレス工業(7246)を取り上げます。
流動資産の内訳を見ると、売上債権が38%に達しています。海外売上高の割合は27.7%に留まっているため、懸念材料とみなす必要はないように考えています。
その他流動資産には、親会社マレリに対する預け金が含まれており、事業再生ADRの活用に際して毀損する可能性があるので注意を要します。



有利子負債がない点は安心できます。



流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は128.6億円です。



時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.56になり、NCAV式ネットネット株に該当します。



続いて、有価証券報告書に記載されている土地の帳簿価額を確認してみます。



神奈川県藤沢市の本社工場の84,549㎡の土地が11.1億円で評価されていることが記載されています。㎡単価は13,000円程度になります。
しかし、以下の地図の中央部分の東京ラヂエーター製造の敷地部分を見ると、令和2年の固定資産税路線価が43,000円と評価されていることが分かります。



しかも、実勢価格の目安は、「路線価÷0.8✕1.1」で算出することができますが、この数式に当てはめると「59,000円」という価格がはじき出されます。
したがって、簿価よりも38.8億円多い49.9億円の価値を有する可能性があります。
これは、時価総額70億円前後の企業にとってはけっして小さな額ではなく、保有資産に比べて株価が非常に割安であることを示しています。
さらに、以下のような6銘柄9.5億円分の上場株式も保有しています。



このように流動資産以外の資産が良質であり、安全域を厚いものにしています。
そのため、NCAV式だけでなく、NNWC式でもネットネット株化しています。
NetCash | 6.05 |
NetQuick | 0.80 |
NCAV | 0.56 |
NNWC | 0.62 |
かぶ1000式 | 0.71 |
2019年以前は、ネットネット株指数が1.0(グレー線)を上回って推移しており、指数の回帰性に期待を寄せることができそうです。



NCAVが伸びていない点はやや気がかりです。



売上高は伸び悩みを見せています。



他社と比較すると、ティラドには大きく劣後しているものの、プレス工業より伸びています。



営業利益が減少傾向にあり、本業での儲けを得る力が削がれています。



とはいえ、同業3社の中では売上高営業利益率がもっとも低く、経済的な「堀」が埋まりつつあるように感じられます。



BPSは、過去10年間に1.85倍に成長しています。



ROEは低水準で推移しています。



当期純利益率は0%台で推移しており、競争優位性の低さを窺わせます。



営業CFは安定してプラスで推移しているものの、フリーキャッシュフローはマイナスに陥ることも多く、株主還元余力が乏しいように感じます。



配当実績を見ると、無配の年も見られ、株主還元に積極性を感じられない企業です。



買収防衛策は導入されていません。
なお、この企業の資本関係も要注目です。



東京ラヂエーター製造の株式の40%をマレリが保有していますが、そのマレリは、ニューヨークの国際的投資会社コールバーグ・グラビス・ロバーツの傘下に入るCKホールディングスの完全子会社であり、経営難に面しています。そのため、近いうちに、何かしらの動きが見られるように考えています。
この不自然な資本関係に目を向けたAVIジャパン・オポチュニティ・トラストというアクティビストが保有株式を増やし、様々な株主提案を行っている点にも要注目です。
現時点で、NCAV式のネットネット株に該当しています。また、流動資産外にも土地や有価証券など良質の資産を保有しており、安全域が厚くなっています。
その一方で,経営難に陥るマレリに対する預け金が毀損する可能性があるため、正味流動資産の価値に注意が必要です。
BPSは伸びている一方で、NCAV・売上高・営業利益が伸び悩んでおり、ROEも低水準です。フリーキャッシュフローは負であることも多く、配当を始めとする株主価値向上策に期待を抱くこともできません。
個人的には、マレリの再建策の先行きが見通せるまで、正味流動資産を正確に把握することが困難であるため、一旦売却しています。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。