2月21日現在、NCAV式・NNWC式ネットネット株の1つにニッチツ(7021)という東証スタンダード銘柄があります。
ニッチツは機械・資源関連会社で、
- 船舶用機器(ハッチカバー、バラ積船用の船殻ブロック、船首部分・エンジンルームのブロック)の製造
- 陸上大型産業機器・機械装置(電力・製鉄等を中心としたプラント用機械・構造物、空気予熱機等)の製造
- 結晶質石灰石の採掘(秩父鉱山)・加工、珪砂の仕入・販売
- 半導体材料ハイシリカや耐熱塗料(サーモジン)、高純度天然ゴム「ライナテックス」の製造
を事業とする企業です。このうち、舶用ハッチカバーは高シェアを誇っています。
ニッチツは、2月10日に2023年3月期第3四半期累計(4-12月)の決算を発表しました。昨年同期比で、売上高は+4.9%の増収、営業利益は0.17億円に黒字転換しています。
このニッチツは、最新の財務内容からして、ネットネット株投資家として保有できる銘柄なのか、調べてみたいと思います。
以下の6つの要素を1つずつ確認してゆきます。
目次
当企業の資産内訳(NNWCの計算式適用後)を見ると、48億円の現金預金を保有しており、安定的です。3か月前と同水準を維持しています。
また、投資有価証券には、めぶきフィナンシャルグループなど14銘柄12億円相当の株式、その他固定資産内には東京都港区の27.6億円と評価されている賃貸不動産が含まれています。



負債の内訳を見ると、有利子負債は13億円に留まっています。長期借入金の平均利率は0.9%です。有利子負債倍率は0.11倍で問題ない水準です。



総負債を除いたNNWC(正味流動資産)は47億円です。3か月前と比較し、2億円ほど増加してます。
時価総額をNNWCで割ったネットネット株指数(P/NNWC)は0.55になり、現時点でNNWC式ネットネット株に該当しています。



過去6年間のNNWCの推移を見ると、横ばいで推移しています。



また、ネットネット株指数は、過去6年間で最も割安な水準に達しています。
ただし、過去6年間にネットネット株指数が1.0を上回ったことはないため、バリュートラップに陥っている可能性はあります。



NNWC式だけではなく、NCAV式でもネットネット株指数が0.66を下回っており割安です。
売上高は減少傾向です。



営業利益の推移を見ると、1999年以降、営業黒字を維持していましたが、2022年に舶用機器の営業不振などにより営業赤字を計上しました。



過去10年間のBPSは、1.08倍に成長していますが、2015年以降はほとんど拡大していません。



ROEは、2016年以降、2%を切って低迷しています



当期純利益率を見ると、過去24年間で3回、最終損失を計上しています。



営業CFはすべての年でプラス、フリーキャッシュフローも多くの年でプラス圏をキープしています。



直近の2022年は悪化しているものの、キャッシュフローが比較的安定しているため、業績が安定すれば、積極的な株主価値向上策を期待することができます。
1998年以降、無配年度はありません。配当利回りは2.38%です。



長崎県沿岸部2箇所に工場を有していますが、津波の浸水想定外に位置しており、震災リスクに対して脆弱な企業ではありません。
なお、東日本大震災が発生した2011年3月の月間騰落率は△6.55%、コロナショックが発生した2020年2-3月の2ヶ月間の騰落率は△19.67%でした。
2021年10月に、買収防衛策(ポイズンビル)を導入しました。
海外投資家割合は5.4%に留まっていることにくわえ、直近株主総会決議の賛成割合が92%に達しており、今のところ、アクティビストの介入余地は乏しそうです。
現金割合の高いネットネット株候補の銘柄です。賃貸不動産や有価証券など、質の高い資産を保有している点も魅力的です。また、不採算事業を清算している点も好印象です。売上高や営業利益が伸び悩んでおり、収益性の低い銘柄ですが、NNWC式ネットネット株水準で数年スパンで保有すれば失敗の少ない銘柄だと考えています。個人的には、2,250円前後に達するまでは保有予定です。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。