NCAV式ネットネット株候補の1つに池上通信機(6771)という東証1部銘柄があります。
この池上通信機は、最新の財務内容から、ネットネット株投資家として保有できる銘柄なのか、調べてみたいと思います。
以下の7つの要素を1つずつ確認してゆきます。
目次
池上通信機は、産業用TVカメラで世界高シェアを誇る放送用機器の大手メーカーです。
したがって、個人的に投資対象から外している不動産業・金融業銘柄には該当しません。
この記事では、池上通信機の類似業社として、情報通信機器中堅メーカーの岩崎通信機 (6704)と電話機・交換機の中堅メーカーのナカヨ(6715)を取り上げています。
当企業の流動資産の内訳を見ると、棚卸資産が47%を占めており、換金可能な資産として、やや信頼性に掛ける内容です。


負債の内訳を見ると、有利子負債が46%に達している点には留意が必要です。



流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は72.3億円です。



時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.68になり、割安ではありますが、現時点ではネットネット株に該当していません。



他の計算式では、ネットネット株水準に達していません。
NetCash | – |
NetQuick | – |
NCAV | 0.68 |
NNWC | 1.82 |
かぶ1000式 | – |
2020年以前は、ネットネット株指数が1.0以上に達しており、ネットネット株指数の回帰性にある程度、期待できそうです。



過去5年間のNCAVは微増傾向です。



売上高は微減傾向で推移しています。



類似業2社と比較して、岩崎通信機が最も苦戦しています。



営業利益の推移を見ると、周期的に営業損失を計上しています。



営業利益率は、類似業2社と比較すると、最も低水準です。



過去10年間のBPSは、2.84倍に成長していますが、変動幅が大きい企業です。



ROEは、大きく変動しており、落ち込む年が散見されます。資金効率の内容をデュポン分解してみます。



当期純利益率を見ると、過去24年間で12回、最終損失を計上しています。



総資産回転率は0.8回程度です。



財務レバレッジは1.9倍程度です。



営業CFも、フリーキャッシュフローも、頻繁にマイナス圏に転落しています。



キャッシュフローが不安定であるため、積極的な株主価値向上策を期待することは難しそうです。
1999年から2013年にかけて、無配に転落しています。



株価は、過去3年間の最安値水準まで下落しています。



買収防衛策を導入していません。
海外投資家割合は3.0%に留まっていることにくわえ、直近株主総会決議の賛成割合が92%に達しており、今のところ、アクティビストの介入余地は乏しそうです。
棚卸資産が多いことに加え、有利子負債が多いため、正味流動資産の質はあまり良くありません。また、営業利益は低いことに加え、ROEやキャッシュフローは不安定です。株価は低迷しており割安感はありますが、個人的にはポートフォリオに含めたい銘柄ではありません。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。