ネットネット株の1つに加藤製作所(6390)という東証1部銘柄があります。
この加藤製作所は、最新の財務内容からすると、ネットネット株投資家として、ホールドできる銘柄でしょうか?
下記の購入基準に該当するか、1つずつ確認してゆきます。
目次
加藤製作所は、建設用油圧クレーン大手メーカーです。
そのため、不動産業や金融業銘柄ではありません。
この記事では、比較対象銘柄として、建設用クレーン世界トップ級のタダノ(6395)と建設機械中堅メーカーの竹内製作所(6432)を取り上げてゆきます。
当企業の流動資産の内訳を見ると、棚卸資産が39%を占めており、注意が必要です。



負債の内訳を見ると、有利子負債は68%に達しています。



流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は212.5億円です。



棚卸資産が多く、有利子負債も多い企業であるため、NCAV(正味流動資産)の質は良くありませんが、時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.47になり、現時点で割安なネットネット株に該当します。



棚卸資産の割合が高いため、他のネットネット株計算式では割安であることを示していません。
NetCash | – |
NetQuick | – |
NCAV | 0.47 |
NNWC | 6.27 |
かぶ1000式 | – |
2019年以前はネットネット株指数が1.0を上回っており、指数の回帰性に期待を寄せることができます。



NCAVは2019年以降、減少しています。



売上高は減少トレンドにあるわけではありません。



類似企業と比較すると、竹内製作所の一人勝ちの様相です。



営業利益がマイナスに転落することも多くなっています。



類似企業と比較すると、竹内製作所・タダノに劣後しており、加藤製作所の持つ「経済的な堀」が埋まってきている懸念が生じます。



BPSは、過去10年間で、1.66倍に拡大しています。



好況期には、ROEが7%を超えています。資本効率の課題をデュポン分解して探ってみます。



当期純利益の変動幅が大きく、好況期には5%前後で推移するものの不況期には▼10%程度にまで悪化しています。



総資産回転率は低水準で、0.5回程度に留まっています。



財務レバレッジは2.3倍程度で推移しています。



不安定な純利益率の推移が、ROE推移に表れています。
営業キャッシュフローはマイナスの年度が多くなっており、フリーキャッシュフローも周期的にマイナス圏に転落しています。



このような不安定なキャッシュフローでは、配当などの安定した株主還元策も危ういものになりかねませんが、現時点で配当が支払われています。



現在の株価は850円前後であり、コロナショック後の底値水準で推移しています。



継続企業の前提に重要事象等の記載がある企業である点に注意が必要です。
買収防衛策は導入されていません。
海外投資家割合は14.8%に達しており、直近株主総会の決議賛成割合は85%程度に留まっているものがあります。今後のアクティビストの介入可能性を感じさせる企業です。
ネットネット株指数が0.5を下回っており、非常に割安です。
しかし、棚卸資産が多く、有利子負債が多い企業であるため、NCAV(正味流動資産)の質が良くないことや、キャッシュフローが乱れている点は大いに気がかりです。
今後、東証の市場再編の影響や今後の景気動向を見守りつつ、ポートフォリオの一部に少量加えることは許容される銘柄だと考えています。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。