小森コーポレーション(6349)の銘柄紹介 ― 国内唯一の紙幣印刷機メーカー

ネットネット株の1つに小森コーポレーション(6349)という東証1部銘柄があります。

この小森コーポレーションは、1月27日に2022年3月期第3四半期累計(4-12月)の決算を発表し、昨年同期比で、売上高が23.8%の増収、営業利益が▼18億円の赤字から12億円の黒字転換を発表しました。

ネットネット株投資家として、引き続き保有していて問題ない銘柄か確認してみました。

下記の購入基準に該当するか、1つずつ確認してゆきます。

①業種

小森コーポレーションは、印刷機専業であり、国内唯一の紙幣印刷機メーカーです。

したがって、不動産業や金融業銘柄ではありません

この記事では、比較対象銘柄として、特殊印刷機メーカーから画像検査事業に転換したシリウスV(6276)と新聞向け中心の輪転機大手の東京機械製作所(6335)を取り上げてゆきます。

②ネットネット株指数

当企業の流動資産の内訳を見ると、現預金が43%を占めており、安定的です。

海外売上高比率は全体の60%前後に達していますが、売上債権の割合は14%程度に留まっていることから、大きな懸念点とは言えません。

負債の内訳を見ると、有利子負債は21%です。

有利子負債自己資本比率は11.58%に留まっており、問題のない水準です。

流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は613億円です。

時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.64になり、現時点でNCAV型ネットネット株に該当しています。

続いて、所有する土地についても確認します。

東京都墨田区吾妻橋3丁目に5,000㎡の土地を保有しています。

「全国地価マップ」

帳簿価格は17.7億円(354,000円/㎡)になっています。

しかし、最新の路線価によると、21.5~25.5億円(430,000~450,000円/㎡)になっています。通常、土地の実勢価格の目安は、

路線価による土地の評価額 ÷ 0.8 × 1.1

と言われています。

したがって、この計算式に当てはめると、この墨田区吾妻橋の当該土地は29.6~35.1億円の価値を有することになります。

また、西日本支社が所在する大阪市城東区蒲生の土地の簿価は、2.29億円(229,000円/㎡)となっています。

最新の路線価によると、1.8~2.5億円(180,000~250,000円/㎡)になっています。

上記の計算式を当てはめると、この大阪市城東区の土地の土地は、2.5~3.4億円の価値を有することになります。

これら2拠点の土地は立地が良いため、時価(目安)32.1億円(墨田区の土地29.6億円、大阪市城東区の土地2.5億円)を正味流動資産とみなすこともできます。。

続いて、有価証券を確認します。

以下のような銘柄を中心に147.6億円の上場株式を保有しています。

これらの有価証券についても正味流動資産に含めることが可能です。

NCAV式以外では、NNWC式でもネットネット株指数が1.0を下回っています。

Net Cash
Net Quick4.05
NCAV0.64
NNWC0.91
かぶ1000式1.60
Net Estate1.49

③バリュートラップの危険性

2020年初頭には、ネットネット株指数が1.0を上回っており、指数の回帰性に期待を寄せることができます。

とはいえ、NCAVは微減傾向であるため、注意が必要です。

④売上高・営業利益・BPS

売上高は低迷しています。

類似企業と比較すると、いずれの企業も売上高が低迷し、苦戦しています。

営業利益は低下傾向にあり、「経済的な堀」が埋まりつつあります。

類似企業の営業利益率と比較すると、小森コーポレーションの営業利益率の低下が目立っています。

BPSは過去10年間で6.0%程度目減りしています。

⑤ROE

ROEは低下傾向にあります。資本効率の課題をデュポン分解して探ってみます。

過去24年間に8度の最終損失を計上しています。

総資産回転率は低水準で、0.5回程度に留まっています。

財務レバレッジは1.5倍程度で推移しています。

⑥キャッシュフロー

営業キャッシュフローも、フリーキャッシュフローもマイナスに転落する年が多くなっています。

キャッシュフローが安定していないものの、過去24年間に無配に転落したことはありません。

現時点での配当利回りは5.2%です。

⑦株価

現在の株価は、過去3年間の最安値水準よりも10%程度高めで推移しているにすぎず、ほぼ底値圏と言えます。

SBI証券

その他の特記事項

海外投資家の割合は25.4%に達し、直近株主総会の賛成割合も70%台前半に留まっているものもあるため、アクティビストの動きに注目したいところですが、買収防衛策が導入されています。

2021年12月から2022年6月にかけて自社株買い(発行済株式総数に対する割合は2.67%)を実施しており、当面は底固く推移しそうです。

まとめ:

比較的、現預金が多い銘柄です。また、NCAV外に上場株式や都市部の不動産を有しており、株主価値は質の良い資産によって裏打ちされています。

したがって、NCAV式ネットネット株指数が0.66を下回っている現状では、安心して保有を継続できる銘柄です。

とはいえ、NCAV、売上高、営業利益、BPSは減少傾向にあり、バリュートラップに陥りやすい銘柄です。ROEは低く、赤字の年度も多いため、収益による安全域を期待することはできません。

5%を超える高配当銘柄であり、自社株買いを実施している銘柄ですが、キャッシュフローに余裕はなく、これ以上の株主価値向上を図る施策を期待することは難しそうです。

買収防衛策を実施する企業であり、アクティビストの介入によるカタリスト期待も困難です。

現在の株価水準は十分に低く、夏前までは自社株買いにより下値が固く推移すると思いますが、景気環境の好転を期待できない現状においては、長期戦を覚悟の上で保有する銘柄になりそうです。

今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。

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