ネットネット株の1つにヤスハラケミカル(4957)という東証2部銘柄があります。
ヤスハラケミカルは、10月29日に2022年3月期第2四半期の決算を発表しました。昨年同期比で売上高が22%の増収、営業利益が3.8倍の増益になりました。
このヤスハラケミカルは、ネットネット株投資家として、購入対象となる銘柄なのでしょうか?
この記事では、次の7つの視点をチェックしてゆきます。
目次
ヤスハラケミカルは、国内唯一の天然テルペン樹脂製造会社で、国内シェアを独占しています。
したがって、不動産業や金融業銘柄ではありません。
この記事では、比較対象銘柄として、製紙用薬品、印刷インキ用樹脂最大手メーカーの荒川化学(4968)と溶解アセチレンの最大手企業である高圧ガス工業(4097)を取り上げます。
当企業の流動資産の内訳を見ると、棚卸資産が62%を占めており、注意が必要です。



負債の内訳を見ると、有利子負債は59%を占めています。



流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は117億円です。



時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.52になり、現時点でNCAV式のネットネット株に該当しています。



なお、他の類型のネットネット株指数は以下のとおりです。
指数 | |
Net Cash | – |
Net Quick | 7.91 |
NNWC | 0.78 |
かぶ1000式 | 2.88 |
NCAV | 0.52 |
NCAV式に加えて、NNWC式でも1.0を下回っています。
2016年以降、ネットネット株指数が1.0を上回って推移していたことはなく、バリュートラップに陥っている可能性が高いように思われます。



NCAVは過去10年間で拡大しています。



売上高は拡大傾向です。



しかし、類似企業を比較すると、大きく劣後しています。



営業利益は、1998年以降黒字を維持しているものの、減少傾向にあります。



類似企業の営業利益率と比較すると、年ごとの変動幅が大きくなる傾向があります。



ROEは、低下傾向です。資本効率の課題をデュポン分解して探ってみます。



純利益率は、2020年を除いて、黒字を維持している点は評価できます。



総資産回転率は0.5回程度で推移しています。



財務レバレッジは1.3倍程度です。



ROEの改善には、純利益率の向上や総資産回転率の向上が課題です。
1株純資産は拡大傾向にありますが、過去10年間で18.8%程度の拡大幅です。



営業キャッシュフローも、フリーキャッシュフローも、マイナスに転落する年が多くなっています。



キャッシュフローが不安定であるため、増配などの株主還元策を期待しにくい銘柄です。
とはいえ、1998年以降、無配に転落した年はありません。



現在の株価は、過去3年間の最安値から27%程度上昇しており、底値圏ということはできません。



買収防衛策は導入されていません。
直近の株主総会での賛成割合は98-99%であり、海外投資家割合も1.1%に留まることから、アクティビストの介入余地はほとんどないようです。
NCAV式のネットネット株指数的には割安です。
しかし、棚卸資産の割合が高く、キャッシュフローが不安定であり、株価が上昇するイメージが湧きにくい銘柄です。
えてしてこのような銘柄が急騰することも多々あるのですが、個人的には今のところは購入を見合わている銘柄です。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。