ネットネット株候補の1つに日水製薬(4550)という東証1部銘柄があります。
日水製薬は、1/27(木)に、22年3月期第3四半期(4-12月)の決算を発表しました。売上高は前年同期比で39.0%の増収、営業利益は2.2倍の増益を計上しています。
この日水製薬は、ネットネット株投資家として、引き続き保有継続できる銘柄でしょうか?
この記事では、次の7つの視点をチェックしてゆきます。
目次
日水製薬は、日本水産の子会社で、臨床診断薬と産業用検査薬を扱う医薬品企業です。
個人的に投資対象から外している不動産業や金融業銘柄ではありません。
この記事では、比較対象銘柄として、臨床検査薬の中堅であるカイノス(4556)と、製薬中堅企業であるゼリア新薬(4559)を取り上げます。
当企業の流動資産の内訳を見ると、親会社である日本水産への預け金を含む現金預金が81%を占めており、非常に安定的です。


負債の内訳を見ると、リース債務を含む有利子負債は1%に留まっています。



流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は273.6億円です。



時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.80になり、現時点でNCAV式ネットネット株に該当していません。



続いて、所有する土地についても確認しておきます。
換金性の高い目立って大きな土地は所有していません。



NCAV式以外のネットネット株指数を確認すると、NQ式、NNWC式、かぶ1000式でも正味流動資産割れになっています。
NC | 1.03 |
NQ | 0.89 |
NCAV | 0.81 |
NNWC | 0.81 |
かぶ1000 | 0.84 |
2020年以前は、ネットネット株指数が1.0を上回っており、指数の回帰性に期待を寄せることができそうです。



NCAVは微増傾向が続いています。



1998年以降、売上高は横ばい傾向にあります。



類似企業を比較すると、ゼリア新薬には劣後しています。



営業利益は、2015年以降、減少傾向にあります。



類似企業の営業利益率と比較すると、日水製薬の利益率低下が際立っています。



BPSは過去10年で1.33倍に拡大しました。



ROEは、好況期には、7%を超えて推移しています。資本効率の課題をデュポン分解して探ってみます。



過去24年間で最終損失を計上した年がない点は評価できます。



総資産回転率は0.35回程度に留まっています。



財務レバレッジは1.1倍程度です。



ROEの改善には、流動資産の大半を占める現預金の効率的な活用が不可欠です。
2000年以降、営業キャッシュフローはプラスを維持しています。
一方、フリーキャッシュフローはマイナスに転落する年も見られます。



このようにキャッシュフローが比較的安定しているため、経営陣の方針次第では、継続的な増配などの株主還元策を期待できますが、親会社の意向に合致せず実施が難しい側面があります。
安定した配当実績を有しています。



予想配当利回りは4.1%に達しています。
現在の株価は、過去3年間の最安値から4%しか上昇しておらず、ほぼ底値圏での推移です。



買収防衛策は導入されていません。
日水製薬の全発行済株式の内、53.69%を日本水産が保有しており、親子上場解消の期待がかかる銘柄です。
とはいえ、プライム市場の選択を申請しているため、その可能性は薄いようにも思われます。
また、親会社の日本水産の現預金は147億円であり、時価総額220億円の日本水産株を直ちに買い取ることは難しいのかもしれません。
ただし、日本製薬の配当利回りは4.1%に達しており、完全子会社化により、配当という外部への資金流出を防ぐというメリットは生じています。
日本水産が過半数の株式を保有しているため、アクティビストの介入は期待できません。
キャッシュリッチなNCAV式ネットネット株候補であり、財務内容は良好です。
ネットネット株指数はやや高めではありますが、最終黒字を維持し続けていることに加えて、キャッシュフローも安定しています。
株価も過去3年間の底値水準にあり、配当利回りも高水準です。
したがって、現在の水準で売却するような銘柄ではないように思われます。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。