ネットネット株の1つに堺商事(9967)という東証2部銘柄があります。
この堺商事は、ネットネット株投資家として、購入し得る銘柄なのでしょうか?
この記事では、次の8つの視点をチェックしてゆきます。
目次
堺商事は、堺化学(4078)の子会社である化学品商社の中堅企業です。
したがって、不動産業や金融業銘柄ではありません。
この記事では、比較対象銘柄として、東北地盤の工業薬品商社である東北化学(7446)と西日本地盤の化学品専門商社である三京化成(8138)を取り上げます。
9月17日(終値:2,311円)の時価総額は41.9億円で、値動きの軽い超小型株です。
当企業の流動資産の内訳を見ると、売上債権が70%を占めています。しかし、在外法人の売上高は13.2%に留まっているため、大きな懸念点ではありません。



負債の内訳を見ると、有利子負債は16%です。



流動資産から総負債を除いたNCAV(正味流動資産)は63.1億円です。



時価総額をNCAVで割ったネットネット株指数(P/NCAV)は0.66になり、現時点でネットネット株に該当しています。



2016年以降、ネットネット株指数が1.0を上回ったことはなく、バリュートラップの可能性に陥っている可能性があります。



NCAVは2017年以降、上昇しています。



1998年以降、緩やかな上昇トレンドをたどっています。2022年3月期が大幅減収予想になっているのは会計基準の変更によるものです。



類似企業の売上高と比較すると、東北化学に大きく劣後しています。



営業利益は僅かながら増益傾向にあり、本業での儲けが一定水準確保されています。



類似企業の営業利益率と比較しても、高水準の営業利益率を保っています。



ROEは、2011年を最後に7%を超えたことはありません。資本効率の課題をデュポン分解して探ってみます。



純利益率は僅かながら上昇傾向にあります。



総資産回転率は、低下傾向にあるとはいえ、2.0回を超えています。



財務レバレッジは2.2倍程度です。



ROEの改善には、純利益率の向上が不可欠です。
自己資本は拡大傾向にあり、過去10年間に1.56倍になっています。



営業キャッシュフローはマイナスに転落する年があり、フリーキャッシュフローもマイナスになることが多くあります。



このようにキャッシュフローが不安定であるため、配当などの安定した株主還元策を期待することができません。しかし、1998年以降、無配に転落した年はありません。



現在の株価は、過去3年間の最安値から64.6%上昇した水準で推移しているため、底値圏とは言えないどころか、高値圏に位置しています。



買収防衛策は導入されていません。
堺商事の全発行済株式の内63.98%を堺化学工業が保有しています。
堺化学工業には111億円の現預金があるため、時価総額42億円の堺商事の株式を買取るためのキャッシュが十分に確保されています。
また、堺商事の浮動株は15.6%に留まっており、買収が成立しやすい株主構成です。
そのうえ、堺商事の配当利回りは2.6%で配当を出し続けているため、完全子会社化により配当による外部への資金流出を防ぐというメリットも生じます。
したがって、堺化学によるTOB実施の思惑が働きやすく、実際に買収が行われないとしても、底堅い動きを見せることが予想されます。
また、堺商事は5G関連機材やレアアースを扱っており、注目を集める可能性があります。
ネットネット株指数的には割安ですが、バリュートラップに陥っている可能性が高い銘柄です。また、キャッシュフローが不安定で大規模な株主還元策が講じられる可能性は乏しく感じられます。
しかし、親会社による上場解消期待の思惑がかかりやすい銘柄であり、市場の暴落などの値下がり局面では購入したい銘柄の一つです。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。