こんにちは、しーげる(@siegelist1)です。
資産バリュー株として有名な銘柄に、宇野澤組鐵工所 (6396)という東証2部上場銘柄があります。
宇野澤組鐵工所は、真空ポンプメーカーです。
宇野澤組鐵工所は、NCAV式のネットネット株ではありませんが、都内に賃貸用オフィスビル(土地を含む)を所有しており、この賃貸不動産を含めた正味流動資産は時価総額を上回っています。
この宇野澤組鐵工所はネットネット株投資家としてホールドできる銘柄なのでしょうか?
①割安性・②収益性・③財務トレンド・④下方リスク・⑤カタリストという5本のモノサシを使って、分析してみます。
目次
宇野澤組鐵工所は、通常のNCAV式ネットネット株(流動資産から総負債を差し引いた正味流動資産で計算)ではなく、含み資産株です。
したがって、棚卸資産を除外し、賃貸等不動産の期末時価を加味した正味流動資産で割安性を判断します。
また、安全域を確保する観点から、賃貸不動産を売却する際には、税金や諸費用が掛かりますので、賃貸用不動産は35%差し引いて評価することにします。
まず、賃貸不動産を含む換金性の高い資産の内訳を見ると、賃貸用不動産(時価✕0.65)が70%に達しています。

この賃貸用不動産は、東京都渋谷区に立地しています。
一方、負債内訳を見ると、有利子負債は54%に達しています。

換金性の高い資産から総負債を除いた正味流動資産は60.4億円です。

時価総額を正味流動資産で割ったネットネット株指数は0.43になり、ネットネット株に該当する非常に割安な銘柄です。

現在の株価は、2,000円台前半です。
過去10年間のチャートを見ると、緩やかな上昇トレンドにあるように見えます。

株価と比較して、収益性はどのような状態にあるでしょうか?
まず、過去10年間の振れ幅は大きい上、成長しているとは言えません。

また、当期純利益については、2012・2013・2015年に最終赤字を計上しています。

過去10年間の平均ROEは2.61で、高くはありません。

宇野澤組鐵工所の財務トレンドはどのようなものでしょうか?
まず、含み資産を加味しないBPS(一株当たり純資産)は上昇トレンドにあります。

また、賃貸用不動産を加味した正味流動資産は、2020年に過去10年で最高水準に達しています。

とはいえ、直近の株価は上昇しており、この銘柄としては割高になっている可能性はないのか、気になるところです。
そこで、下の図のネットネット株指数の推移を確認します。

過去10年間のネットネット株指数を見ると、少しずつ割安度が失われる傾向にあることが確認できます。
とはいえ、現在は再び割安度が深まっており、現在は2017年春以来で最も割安な水準にあります。
有利子負債自己資本比率は142.95%で、あまり好ましくない水準です。
一方、流動比率は207.98%で、こちらは問題ありません。
また、賃貸不動産は分散されていませんので、地震などにより不動産に被害が生じた場合、資産価値が毀損する可能性があります。
したがって、有利子負債の多さや災害リスクを考慮に入れると、この銘柄に集中投資するのではなく、分散銘柄の一つとして保有したほうが良いかもしれません。
役員は全株式の11.8%を保有しており、株価上昇のインセンティブとなる可能性があります。
昭和59年に渋谷工場跡地に東急不動産と共同でウノサワ東急ビルを建設したという歴史がありますが、その東急不動産が最近、宇野澤株を9%まで買い集めています。
築36年が経過するウノサワ東急ビル周辺で何か動きがあるのでは・・・という思惑も絡み、投資家の注目を集める機会が増えてくるのかもしれません。
棚卸資産を除外し、賃貸用不動産(時価✕0.65)を加味したネットネット株指数が0.43と非常に割安です。
過去10年間の平均ROEは2.61で、収益性は低水準です。
正味流動資産は上昇傾向にあり、株価は割安な状態が保たれています。
有利子負債が多く、不動産が分散されていないため、一定の財務リスク・災害リスクがありますが、分散された投資対象としては問題ありません。
また、所有不動産を共同開発した東急不動産が保有株式を増やしていることは、注目を集めるきっかけになるかもしれません。
こうした5つの観点を総合的に考慮に入れると、個人的には、宇野澤組鐵工所はポートフォリオの一部に組み入れておきたい銘柄です。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。