こんにちは、しーげる(@siegelist1)です。
今回取り上げるのは、再び東京汽船です。個人的にはお気に入りの銘柄で、安全域が厚いと考えてきました。
ところが、この銘柄については、さらに加味すべきファクターがありましたので、再度調べてみました。
目次
1.高い平均年収
この週末、「会社四季報 秋号」を読みつつ、「『会社四季報』業界地図2020年版」を読んでいます。
お読みになった方はご存じのとおり、「業界地図」には、「上場企業の平均年収ランキングBest50」が掲載されています。
そこには、しがない筆者には到底想像できない世界が広がっており、このランキングによれば、40歳モデル年収(単位:万円)は、
1 | M&Aキャピタルパードナーズ | 2,920 |
2 | キーエンス | 2,299 |
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7 | 三菱商事 | 1,533 |
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23 | 電通 | 1,155 |
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31 | 武田薬品工業 | 1,067 |
︙ | ︙ | |
39 | 東京汽船 | 1,034 |
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45 | 商船三井 | 1,005 |
となっています。
なんと、我が東京汽船が39位にランクインしています。さらに驚きなのは、大株主の商船三井の社員よりも高給であることです。
曳船業務には専門性の高い人材が必要、ということがあるのでしょう。きっと優秀な人材が集まっているにちがいありません。
そのような優秀な社員の皆さんの叡智を集め、低迷する株価を押し上げていただきたいものです。おそらく従業員持株制度で東京汽船株をたくさん持ってるんでしょうから・・・。
そう思って「四季報」の株主構成を見たところ、ありません。。。「自社社員持株会」の名前が。
この規模の企業で、持株会があれば、10位以内にinしてくるはずなのですが(社員1名当たり480,000円程度)、大株主リストに挙がっていないことからすると、持株会制度そのものが存在していないのかもしれません。
いずれにしても、高い平均年収は、優秀な人材を獲得しやすく、他社に人材を流出しにくい、という点で、バリュー投資家にとってはプラス材料であると思われます。
2.関係会社の状況
先日、ある方のツイートを拝見したところ、東京汽船の子会社株式の簿価の信用性について鋭い疑問を呈しておられ、大変参考になりました。
2019年3月期の「有価証券報告書」によれば、東京汽船には、5つの連結子会社と6つの持分法適用関連会社があります。
この5つの連結子会社の中には、㈱ポートサービスという横浜で旅客船事業を営む企業が含まれています。
問題なのは、この子会社が4億814万6000円の債務超過に陥っているという点です。
しかも、売上高(ポートサービス)の連結売上高(東京汽船)に占める割合が10%を超えており、かつ、東京汽船が債務保証を負っており、関係性が非常に密であることが分かりました。
ポートサービスを含む関係会社の株式は、東京汽船の貸借対照表(BS)上、固定資産の「関係会社株式」に計上されているものと思われます。
元来、非上場株式の評価額は「絵に描いた餅」のようなものだ、と言われています。株式譲渡制限が付くなどして、すぐに現金化することが難しいからです。まして、債務超過に陥った企業が仮に企業の清算を行ったとすれば、株主の取り分は全く存在しないことから株価はゼロということになります。
当ブログの東京汽船の分析ページでは、「関係会社株式」を正味流動資産に含めてネットネット株指数を算出していました。
しかし、東京汽船がポートサービスの株価をどのように会計処理しているのか判然としません。
したがって、安全域を確保するという観点から、上記の要素を考慮すると、「関係会社株式」を正味流動資産から除外したほうが望ましい、と考えました。
3.ネットネット株指数(訂正版)
「関係会社株式」を省いた東京汽船のネットネット株指数の訂正値は以下のとおりです。

「関係会社株式」を省いても正味流動資産は95億6846万7000円と厚く、Cash型のネットネット株です。

9月20日の終値728円で算定した時価総額72億8728万円を正味流動資産95億6846万7000円で割ったネットネット株指数は「0.76」となります。
一定の目安となる「0.66」を上回り、超割安とまでは言えませんが、未だ割安の水準にあります。
4.結論
東京汽船の「関係会社株式」の簿価の信用性に関する示唆に富むツイートを通して、重要な点に気づくことができました。
「関係会社株式」を正味流動資産から除外しても、東京汽船株は依然として割安であることに変わりませんので、引き続き保有して、ネットネット株指数が「1」となる955円ほどになるまで待ちたいと考えています。
とはいえ、お気に入りのネットネット株とまでは言えないことになりましたので、「ネットネット株5選」からは東京汽船株を除かせていただきました。この点をご了承いただければ嬉しく思います。
今回もお読みくださり、どうもありがとうございました。